
医師や看護師、介護職員の不足は長年の課題だ。参院選で各党・候補は地域医療体制の強化や福祉の人材確保、待遇向上などを訴えているが、すぐに効果をもたらすのは難しい。福島県人口に占める65歳以上の割合は2020(令和2)年10月時点で31・7%と全国平均を2・9ポイント上回っている。高齢化が進む中、早急な対策が求められる。県民は「安心して暮らせる地域を実現してほしい」と訴える。
奥会津の山あいにある只見町の6月現在の高齢化率は48・4%。町内唯一の医療機関である朝日診療所で勤務するのは常勤医師が3人、看護師は10人。人手不足のため、午後9時以降は救急患者を受け入れられない状態が続いている。
農業馬場新介さん(77)は、医療体制に不安を感じながら1人で暮らしている。近所に住む同世代の友人が緊急手術が必要になった際、会津若松市の病院まで車で1時間40分程度かかったという話を聞いた。「1分1秒を争うような事態では、助かるはずの命が助からない場合もある」と懸念する。遠隔診療などが広まれば普段も便利だと感じる。
デジタル技術の活用、病床削減の再検討など、各候補が訴える政策について吟味した上で投票先を決めるつもりだ。「給与を補助するなどして、へき地に医師を定着させてほしい。医療従事者と地域を結び付ける施策も考えるべきだ」と求めた。
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介護事業を展開する伊達市梁川町のシルバー専科日和取締役の永田学さん(43)は、人手不足をどう解消するか頭を悩ませている。待遇改善を進め、インターネットに求人を掲載しているが、応募はない。
運営する市内の通所介護施設では、職員が付き添い、畑で農作物を栽培するなどして利用者に充実した過ごし方を提供している。きめ細かい介護には職員の確保が欠かせないが、勤務のやりくりに苦労している。職員は30人ほどで、女性が大半を占める。一時的に休職するケースもあり、現在は職員2人が産前休暇を取得中だ。
政府は公費を投じ、介護職員の賃上げを促してきた。厚生労働省の調査によると、全国の平均給与(賞与込み)は常勤で処遇改善の加算を受けている場合、昨年9月時点で月32万3190円となっており、前年同月と比べて7780円増えている。各党はさらなる賃金の引き上げなどを公約に掲げているが、永田さんは職員確保には他の施策も重要だと考える。「介護ロボットの普及などで職員の負担を減らしてほしい。仕事がきついという介護職のイメージの改善も必要だ」と訴えた。