論説

【県南区割り改定案】民意を反映できるのか(7月23日)

2022/07/23 09:00

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 衆院選挙区画定審議会(区割り審)が示した新たな改定案を受け、西白河地方市町村会と東白川地方町村会は二十一日、要望書を国や各党、本県関係国会議員に提出した。改定に疑問を呈するとともに、中選挙区制復活も視野に入れた選挙制度の抜本的改革にも言及した。都市部への人口集中が止まらない中、現行制度が真に民意を反映できているのかを厳しく問いかける。国はこの声を重く受け止め、真摯[しんし]に対応すべきだ。

 改編を西白河、東白川両地方の中通りからの分断と捉えている。地勢や歴史・文化、さらには経済圏や生活圏が会津とは異なると強調、二〇一七(平成二十九)年の区割りで西郷村が西白河地方から切り離されて4区に再編された経緯を踏まえ、「地域の一体性を考慮したとは言い難く、極めて不自然で数合わせの改定案」と指摘する。

 今年一月に衆院選挙区画定審議会に対して内堀雅雄知事が意見書で求めた地域一体性に対する最大限の考慮は、今回の改定案に十分に尊重されているとは言えない。

 憲法は一票の投票価値の平等の実現を求めている。定数配分算定の根拠としたアダムズ方式は、選挙区間の投票価値の格差を縮小するとされてはいる。ただ、人口という数字が定数を左右する唯一かつ決定的な判断基準となるかに関しては、全国で異論がくすぶっているのが現状だ。

 「人口の少ない地域の議員が減れば、その地域の声が国政に届きにくくなる」との懸念は、これまで何度も指摘されてきた。国会議員が全国民の代表か、地域の代弁者なのかの論議を含め、根底には投票価値の平等を求める法と、地方に暮らす住民それぞれが見つめる方向は必ずしも一致しないという現実がある。

 一方、二〇一一年の東京電力福島第一原発事故による自主避難者への賠償に関して、中通りでは西白河、東白川両地方のみが対象外となったことと重ね合わせて捉える住民もいる。不本意な記憶が、政治不信につながりかねない危うさをはらむ。

 西郷村が4区に編入された際、一票の格差と一極集中の是正は表裏一体だとして、人口減少社会を踏まえた地方への配慮と、安定した選挙制度を求める動議が県町村会に提出された経緯がある。今回の要望の動きも、この延長上にあると言える。住民が最も危惧するのは都市と地方の格差であり、地域間の分断だ。今回の要望は選挙区改定案で浮かび上がった懸案に対する、地方からの警鐘と捉える必要がある。(広瀬昌和)