東日本大震災・原発事故

処理水海洋放出計画で海底トンネルなどの着工了解 福島県と立地2町 放出反対の声根強く

2022/08/03 09:50

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 東京電力福島第一原発の処理水海洋放出計画で、福島県と原発立地自治体の大熊、双葉両町は2日、海底トンネルなどの本体着工を了解すると東電に回答した。三者の了解を受け、東電は今月中に工事を始める方針。ただ、新たな風評発生の懸念から放出に反対する声は根強く、政府と東電が目指す来春の放出開始が実現するかは依然として不透明だ。

 同日、内堀雅雄知事と吉田淳大熊町長、伊沢史朗双葉町長が小早川智明社長と県庁で会談。「(県原発安全確保技術検討会の)報告書で(計画の)技術的な安全性の確保を確認した」として了解の意向を示し、それぞれ回答書を手渡した。

 東電の事前了解願に応じた上で、内堀知事は「県民、国民の理解が十分に得られているとは言えない状況だ」と強調。「新たな風評を発生させないとの決意のもと、万全な対策を講じてほしい」として処理水に関する理解醸成や風評対策に尽くすよう要請した。小早川社長は「さまざまな関係者に理解を深めていただけるよう全力で取り組む」と述べた。

 県と両町は了解に際し、検討会が報告書にまとめた八つの要求事項の確実な実施、汚染水発生量のさらなる低減などを東電に求めた。吉田町長、伊沢町長はそれぞれ「廃炉作業を安全かつ着実に進めてほしい」と訴えた。内堀知事は第一原発の廃炉作業などでトラブルが相次ぎ、県民に不安を抱かせているとして東電社員の意識改革も申し入れた。

 海洋放出方針を巡り、政府と東電は「関係者の理解なくしていかなる処分もしない」としているが、国内での理解醸成は進んでおらず、地元漁業者を中心に反対が根強い。

 東電は昨年12月、放出計画の事前了解願を県と両町に提出した。計画を審査してきた原子力規制委員会は7月、安全性に問題はないとして認可。県原発安全確保技術検討会も安全性を確認したとする報告書をまとめ、県と両町の対応が焦点となっていた。

 東電の計画では、処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度が国基準の40分の1未満になるよう海水で薄め、海底トンネルを通して沖合約1キロで放出する。


■県が事前了解の回答書で東京電力に求めた対応

●1県原発安全確保技術検討会が取りまとめた8つの要求事項の実施

 要求事項(トラブルの未然防止に有効な保全計画の策定、スケジュールありきでなく安全最優先の工事、分かりやすい情報発信など)を確実に実施し、取り組み状況を報告すること

●2廃炉・汚染水対策に関する取り組み

 (1)処理水放出量を抑制するため、原子炉建屋への地下水・雨水の抜本的な流入抑制対策に取り組み、汚染水発生量をさらに低減させること

 (2)ALPSなどの浄化処理で発生する汚泥や吸着塔などの二次廃棄物について、安全な処理・処分に向けた技術的検討を進め、県外搬出の取り組みを確実に進めること