東日本大震災・原発事故

津波流失の苕野神社再建へ 福島県浪江町

2022/08/13 09:24

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苕野神社の社殿のあった場所を確認する佐山さん
苕野神社の社殿のあった場所を確認する佐山さん

 東日本大震災の津波で流失した福島県浪江町請戸地区の苕野(くさの)神社の再建が決まった。請戸行政区と氏子総代が町や県と協議を重ね、神社庁から再建の承認を得た。1000年以上の歴史を誇る「安波祭(あんばまつり)」が奉納され、住民の心のよりどころだった。2024年2月の安波祭での完成披露を目指す。

 「ようやくここまで来た。再び住民の絆を強めたい」。苕野神社会計で請戸行政区監査の佐山弘明さん(68)=いわき市に避難=は11年間を振り返った。

 2011年3月の震災による津波で、神社の社殿は流され、当時の宮司らが犠牲になった。津波被害に加え、東京電力福島第一原発事故で避難を強いられた。

 佐山さんの自宅は苕野神社の隣にあった。住民は「請戸には、震災遺構の請戸小や鎮魂の場の先人の丘が整備された。しかし、住民がこの地に生活してきた証し、住民の心のよりどころである神社を残してほしい」と、昨年11月に神社本庁に再建の申請書を提出した。願いが届き、3月末、神社本庁から承認された。

 神社があった場所は県が防災林として整備する予定で、敷地の3分の1ほどの土地に神社を再建する。既に盛り土を始めており、1年かけて土地を固める。その後、社殿を建築し、2年後の安波祭に間に合わせる考えだ。社殿は以前と同じ、流造という特殊な工法を採用する予定。

 苕野神社では毎年2月の第3日曜日に神社を中心に海上安全や豊漁、豊作を願う安波祭が繰り広げられてきた。平安時代、サカキの葉を潮水に浸し、その清濁で漁を占ったのが起源とされる。「半農半漁」を営む庶民の祭りとして大切に受け継がれてきた。

 安波祭で奉納されてきた田植踊りを受け継いでいる請戸芸能保存会長の佐々木繁子さん(71)=いわき市に避難=は「再び苕野神社で奉納できる日が待ち遠しい」と願っている。