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福島県大会:試合速報

聖光(福島)最後まで闘志 来年の夏こそ日本一 夏の高校野球 準決勝

2022/08/21 10:57

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【仙台育英-聖光学院】1回裏、聖光学院1死一、三塁、三好が左翼線に先制打を放つ
【仙台育英-聖光学院】1回裏、聖光学院1死一、三塁、三好が左翼線に先制打を放つ
【仙台育英―聖光学院】2回途中5失点だった聖光学院の先発小林剛
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【仙台育英-聖光学院】2回表、仙台育英の攻撃でホームを守る山浅
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【仙台育英-聖光学院】5回表、仙台育英無死二塁、斎藤の飛球を中堅手安田が好捕
【仙台育英-聖光学院】5回表、仙台育英無死二塁、斎藤の飛球を中堅手安田が好捕

 20日に行われた第104回全国高校野球選手権大会第13日の準決勝第1試合で、聖光学院は仙台育英(宮城)に敗れた。一回に三好元気が左翼線に安打を放ち、先制したが、二回に仙台育英の猛攻を受け、11点を奪われた。選手は好守を見せるなど最後まで粘り強く戦った。

■全試合安打2年生、三好 思い胸に先輩超え誓う

 聖光学院の2年生4番三好元気は九回2死一、二塁で打席に入った。3球ファウルで粘ったが内角高めの直球にバットが空を切り、試合終了。日本一の夢を追いかけ、先輩とともに戦った長い夏が終わった。「もう3年生と野球ができないと考えた瞬間に涙があふれた。負けさせてしまって申し訳ない」。悔しさに声を震わせた。

 全5試合で安打を放ちチームを支えた。1回戦の日大三(西東京)では貴重な追加点となる左越え本塁打。準々決勝の九州学院(熊本)戦では一回に逆転の左翼線二塁打を放った。準決勝でも一回1死一、三塁の好機で内角の直球を振り抜き、左翼線に先制打。「(3番)安田さんが安打でつなぎ、いい場面で回してくれた。甘い球が来たら振り抜こうと思った」と振り返った。

 試合後、3年生は、初の4強進出を支えた2年生の活躍をたたえ、エールを送った。「ここまでこられたのは3年生のおかげ。来年の夏、甲子園に戻り、日本一になる」。先輩を超える新たな歴史を切り開く思いを胸に抱き、涙を拭った。

■チーム支える自覚胸に 先発、小林剛 主戦、佐山と高め合う

 聖光学院の先発小林剛介は二回途中でマウンドを降り、試合をつくることができなかった。「力不足。悔しい」と声を絞り出した。

 前日の練習で斎藤智也監督から先発を告げられた。1回戦の日大三戦でも先発を任され、五回途中まで2失点と粘りの投球を見せた。一回のピンチは無失点で切り抜けたが、二回は得意の変化球が仙台育英の強力打線につかまり5失点。「自分が狙ったコースに投げたボールもことごとく捉えられた」と脱帽した。

 福島大会は主戦佐山未来の調子が上がらず、何度もチームの窮地を救った。「佐山1人では勝ち上がれない」。チームを支える強い自覚を持って甲子園のマウンドに上がった。試合後、佐山に「自分が情けなかった。ごめん」と声をかけると、「こちらこそごめん」との言葉が返ってきた。「2人で歩んできた時間はかけがえのないもの」と振り返った。

 長い夏の戦いは終わった。「悔しい思いはあるが、ぜひ東北に優勝旗を持って帰ってほしい」。仙台育英ナインに日本一の夢を託した。

■目標まであと一歩 責任一身に 捕手、山浅

 聖光学院の捕手山浅龍之介は仙台育英打線を止められなかった責任を一身に背負い込んだ。「自分でどうにもできなかった。投手陣に本当に申し訳ない」と言葉を詰まらせた。

 二回、先発小林剛介の変化球を捉えられた。低めの球は見極められ、打ち取った打球も内野の間を抜けた。苦しい流れが続く中、主戦佐山未来が2番手でマウンドに。準々決勝までの全4試合に登板し、気力を振り絞って投げ続ける主戦に報いようとリードしたが、相手の勢いに飲まれた。「投手の状態がどうであれ、自分の配球ミスだと思う」と反省の言葉が口を突いた。

 投球を捕球してから二塁に送球が届くまでの時間は1・8秒台と大会屈指の強肩を誇る。今大会5試合で一つの盗塁も許さず、相手の攻撃の選択肢を狭めてきた。投手の強みを生かした強気のリードで投手陣を引っ張り、チーム初の4強入りの立役者になった。目標の日本一にはあと一歩届かなかったが、「悔しさを忘れずに頑張ってほしい」と後輩に願いを託した。

■涙ながらに「感謝」 主将、赤堀 「谷間の世代」4強に導く

 聖光学院の主将赤堀颯は試合終了を迎えると、あふれる涙を気にすることなく列に加わった。「たくさんの人に支えられ、高校野球を完結する(甲子園の)舞台に立てた」と感謝の気持ちを示した。

 日本一を目指し、中心になってチームをまとめ上げてきた。「谷間の世代」と呼ばれたが、「力がないからといって、勝てないとは限らない」と常に前向きな姿勢でナインにハッパをかけた。弱さを受け入れ、練習に全力で取り組んできた。

 斎藤智也監督が「赤堀がつくったチーム」と称賛するキャプテンシーを持つ。自身の鍛錬も怠らず、今大会の打率は4割。1回戦から5試合連続で一回に出塁し、1番打者としてチームを引っ張った。守備では難しい打球を難なくさばき、投手陣をもり立てた。

 チームは初の4強に進み、聖光学院の新たな歴史を築いた。「スタンドを含め、部員が準決勝の空気を吸えたことは大きい。もっと強くなってくれるはず」。経験と悔しさを糧にしてくれると信じ、日本一の目標を後輩に託した。

■9回代打で出場意地の内野安打 三田寺

 ○…聖光学院の三田寺大吾は九回に代打として出場。初めて甲子園の打席に入った。フルカウントになった後、ファウルで2球粘り、三遊間に鋭い打球を転がした。俊足を生かして一塁に頭から滑り込み、内野安打とした。その後は打線がつながらず得点できなかったが、気迫のこもった全力プレーで大観衆を沸かし最後まで諦めない姿勢を貫いた。

■攻守でけん引最後まで粘り 安田

 ○…聖光学院の安田淳平は攻守でチームをけん引した。攻撃では一回1死一塁から中前打を放ち、先制点につなげた。六回も無死一塁で右前打を放ち、好機を広げた。中堅の守備でもビッグプレーを見せた。五回無死二塁で、相手4番打者の左中間への飛球をスライディングキャッチ。最後まで諦めずに白球を追い続ける姿にスタンドの大観衆から大きな拍手を受けた。

■2安打1打点好捕で窮地救う 生田目

 ○…聖光学院の8番生田目陽は2安打1打点と気を吐いた。準決勝までの5試合全てで安打を放ち、初の4強入りを下位打線から支えた。六回は1死満塁から中前にしぶとく運び1点を返すと、七回の守備では、2死一、三塁で三塁線を抜けようかという強烈な打球を好捕。素早く一塁に送球して窮地を切り抜けるなど準決勝の舞台で躍動した。

■反撃の口火切る右前打 狩野

 ○…聖光学院の狩野泰輝は六回1死満塁から反撃の口火を切る右前打。慎重にボールを見極めて、5球目を捉えた。伊藤遥喜が四球、生田目陽が中前打で続き、3点を奪って応援席を沸かせた。一回1死満塁で迎えた第1打席は初球をはじき返したものの投ゴロ併殺になり、流れをつくれなかったが、自らの打棒でミスを取り返し、打線を勢いづけた。

■健闘たたえる 宗像県高野連顧問

 県高野連関係者は、初の4強に進み、最後まで粘り強く戦った聖光学院ナインの健闘をたたえた。

 大会本部委員も務める宗像治顧問は「これまでより攻撃力が高かった。聖光学院の歴史に新たな一ページを書き込んだ。あいさつや謙虚さなど、4強にふさわしいチームだったと思う」と活躍の要因を語った。

 木村保理事長は「最後まで諦めずよく頑張った。勇気や希望、感動をもらった。県内高校球児の刺激と励みになった。胸を張って帰ってきてほしい」とねぎらった。


■全国レベルの実力証明 総評

 日本一を目指した聖光学院の戦いは、準決勝で幕を閉じた。3年ぶり17度目の夏の選手権。1回戦から3回戦まで強打と堅守で次々に優勝経験校を撃破すると、準々決勝を突破し初めて4強に入った。県勢初の4勝で全国レベルの実力を改めて証明した。

 1回戦は日大三に対し2点を追う展開になったが、2本の本塁打などで4-2で逆転勝ちした。2回戦は横浜と対戦。3-2で競り勝ち、神奈川県勢から初の白星を挙げた。3回戦は強打・敦賀気比のお株を奪う猛攻を見せ8-1で大勝した。準々決勝は九州学院との雨中の乱打戦を10-5で制し、初の準決勝進出を決めた。夏の甲子園4勝は初めてだった。

 準決勝は仙台育英に4-18で敗れた。投手陣は粘る打者に苦しみ、甘い球をことごとくはじき返された。二回に一挙11点を奪われ、一方的な試合展開になった。打線は140キロ超えの直球を投げる相手投手陣を捉えきれなかった。

 主戦佐山未来はけがから復活し、直球と変化球を制球良く投げる本来の姿を見せた。左腕の小林剛介は変化球を多投し、相手打線のリズムを狂わせた。守備は5試合で5失策。堅い内野陣、俊足の外野陣、強肩の捕手山浅龍之介の活躍が投手を助けた。攻撃陣は流れを一発で変える長打力を発揮した。一大会3本塁打は県勢で最多だった。

 選手は泥くさく、信念を持って戦った。だが、疲れが見えた準決勝は、相手の勢いを食い止めることができなかった。斎藤智也監督は「(レベルの高い複数の)投手の育成が指導者に求められる」と勝ち進む上での課題を挙げた。新チームには甲子園で本塁打を放った2番高中一樹、4番三好元気のレギュラー2人が残る。今大会の経験を浸透させながら、先輩を超えるチームをつくってほしい。(取材班)