
福島県双葉町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)にある双葉署双葉駐在所は、30日の避難指示解除に合わせて再開する。住み込みで勤務する同駐在所主任の梅宮広貴さん(40)=巡査部長=は駐在所が再び開くのを心待ちにしてきた。「町民の支えとなり、治安面から復興の力になる」。安全安心を守る誓いを新たにする。
町内の六号国道沿いにある同駐在所。26日、梅宮さんが29日に行われる開所式に向けて荷物を運び入れた。「もうすぐ町が再スタートする。うれしい限り」。再開への準備が着々と進む。
会津若松署会津美里分庁舎勤務のときに東日本大震災と原発事故が起きた。発生から約1カ月後、福島県双葉町などに応援で足を運んだ。家屋は崩れ、道路は寸断し、身に着けていた線量計が鳴りやまない。恐怖を感じながらがれき撤去や線量測定に当たった。「何とか被災地の力になりたい」との思いが強まった。
2020(令和2)年3月から現職を務める。双葉駐在所は使用できないため、再開を待ちわびながら双葉署浪江分庁舎を拠点に活動した。双葉町のパトロール、一時帰宅をした住宅などを訪ね、住民の困り事に耳を傾けてきた。住民同士のつながりを維持しようと、交流イベントの告知にも努めた。「警察官が来ると安心する」。温かい言葉に励まされた。町を守りたいとの思いは増すばかりだ。
被災地の不在家屋を狙った空き巣などの犯罪は今も発生している。町内では警察と防犯団体らが連携して巡回活動を実施しているが、団体側の人員確保などの課題があり、十分な体制は構築できていないのが現状だ。限られた人手の中で住民の安全をどう守るのか。梅宮さんは帰還した住民宅を一件一件戸別訪問し、犯罪や交通事故防止を訴える考えだ。
「町に住み始めることで今まで目に見えなかった事実が分かるはず。細かなところまで目を光らせ、まちの安全を守っていく」と決意を胸に刻む。