東京電力福島第一原発事故に伴い、双葉町の帰還困難区域内に設定された特定復興再生拠点区域(復興拠点)は三十日に避難指示が解除され、住民の居住が十一年五カ月ぶりに再開した。ただ、復興への道のりは依然険しい。国は、町が実施する住民帰還を含めた新たなまちづくりに対し、これまでにも増して手厚く支援していく必要がある。
復興拠点はJR常磐線双葉駅を中心とした約五百五十五ヘクタールで、駅近郊をまちなか再生エリア、周辺部を農業エリアなどと位置付けている。駅東側は、九月五日に新しい町役場での業務が始まる予定だ。駅西側は町の診療所や災害公営住宅などの整備が進められている。避難指示解除時点で町内に滞在していた町民は八世帯十三人となっている。
町は二〇三〇年ごろの居住者数として、帰還住民約千四百人を含む約二千人とする目標を掲げている。復興庁の昨年夏の意向調査で、帰還を考えている人は回答者の約一割だった。利便性や魅力を一段と高め、住民や移住希望者に「住みたい」と思ってもらえる地域づくりを急がなければならない。
六月に策定された第三次町復興まちづくり計画には、住民帰還とにぎわいの創出に向け、駅東側への商業施設の整備が盛り込まれた。避難指示が解除されても、居住者が少ない地域に施設を呼び込むのは容易ではない。既存の町図書館、コミュニティーセンター、町民グラウンドといった公共施設の利活用策を含め、具体的な将来像は見通せていない。こうした現状は、帰還や移住を考えている人をちゅうちょさせかねない。
伊沢史朗町長は、就任あいさつで訪れた秋葉賢也復興相に対し、「(避難指示が解除されても)復興に向けたスタートラインに立った状態だ」と述べ、継続的な財政支援などを求めた。商業施設の誘致、住民交流施設の整備、小中学校の再開、観光資源の開発など町がかつての姿を取り戻す上での課題は依然、山積している。安全・安心に暮らせる環境づくりに向けた財政支援を、町が復興を成し遂げるまで続けるのは国の責務だ。
避難指示が解除された町内の面積は全体の約15%で、約四千四百ヘクタールに及ぶ復興拠点外には約二千人が住民登録している。拠点外の帰還希望者が帰れる環境を整備するとした国の方針に対し、町民からは全体の除染を求める声が上がっている。国は、帰還困難区域を抱える市町村の全域除染を確約し、避難指示解除のスケジュールも早期に示すべきだ。(円谷 真路)