クジラ、ウサギ、コト…。これらの言葉が指す自然現象は?。そう尋ねられて、すぐに思い浮かぶ人は多くはないだろう。台風に付けられる「アジア名」という▼国内では発生順に番号で呼ぶのが一般的だが、日本を含む十四の国や地域の組織・台風委員会は二〇〇〇(平成十二)年からアジア名を用いている。子どもにもなじみのある呼び名で、防災意識を高める狙いがあるそうだ。主に百四十個を順番に繰り返し使う。日本の言葉は十個で、星座名に由来する。今年の台風10号は「トカゲ」だった▼気象庁は、大規模な被害をもたらした台風には地域名などを当てはめる。千棟以上の家屋損壊などの基準がある。二〇一九年の台風19号は「令和元年東日本台風」とされた。アジア名は「ハギビス」。フィリピンが命名し、「素早い」を意味する。名にたがわず急速に発達し、県内を含む広い範囲に甚大な影響を及ぼした▼きょう一日は「防災の日」。「荒れ日」とも称される要注意日だ。世の子どもたちにはアジア名から学んでほしい。どんな台風でも決してあなどるなかれ。ヤギやコイヌと、どんなに愛らしく名付けられても、その正体は地を激しく荒らす牙を持つ。