論説

【福島庭園10年】交流の輪を広げよう(9月20日)

2022/09/20 09:05

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 英国ロンドンの福島庭園が開園10周年を迎え、本県復興への思いを巡らす場として連日、多くの市民が立ち寄る。福島と英国をつなぐ交流拠点としての役割や存在感が一段と高まるよう期待したい。

 福島庭園はケンジントン&チェルシー王立区のホーランド・パーク内にある。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の復興支援の象徴として2012(平成24)年、福島民報社の復興大使派遣を契機に整備された。約千平方メートルの敷地に植栽された草木は10年の歳月とともに成長し、彩り豊かに来園者を出迎えている。公園を管理する王立区の好意は、復興への変わらぬ願いの表れでもある。

 現地で7日に催された記念式典で、デビット・リンゼイ区長は「大きく育つ庭園の木々が福島の力強い復興と重なる。福島と王立区の交流関係も同じように育てていきたい」と末永い友情を誓った。その言葉に対し、式典を見守る来園者から大きな拍手が起きた。庭園が市民に受け入れられている証しだろう。

 開園に尽力した在英県人会ロンドンしゃくなげ会は5月、園内で花見会を開いた。現地の関係者に感謝を伝えるとともに、庭園を有効活用するのが狙いだった。満山喜郎会長(白河市大信出身)は「この10年で、ロンドンでの福島庭園の認知度はアップした。今後はどのように利用し、市民に足を運んでもらうかが問われる」と次の10年を見据えている。交流拠点としての機能を強化し、復興支援の機運を盛り上げ続けたいとの思いがある。

 本宮市は、ウィリアム王子(現皇太子)が来市した縁で、英国と交流を続ける。福島庭園をきっかけに設けられた英国庭園もあり、両園は姉妹関係を結んでいる。福島庭園を核に交流が進展した好例と言える。

 福島庭園を世界各地に広げられないだろうか。海外の県人会は24の国と地域に36団体ある。小さな公園や記念碑でもいい。復興支援の象徴として心を一つに活動できる場がいくつもあれば、海外支援の輪は点から面に拡大する。

 在外県人会は本県の心強い援軍であり、会員は県産品の有力な消費者だ。県は県人会が開催するイベントに日本酒などを提供し、活動を支える。ただ、新型コロナ禍で各地の活動は停滞気味という。県は各団体の役割と実情にもっと目を向け、組織の維持、活性化に協力すべきだろう。県人会の活躍は次の福島庭園を生み出し、本県と世界のつながりを強める原動力になるはずだ。(角田守良)