
福島県双葉町の初発(しょはつ)神社の秋季例大祭は23日、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後初めて同神社で執り行われた。地元の三字芸能保存会が約12年ぶりに町内で伝統の神楽を奉納し、町民らが帰還の加速化や五穀豊穣(ほうじょう)を祈願した。
初発神社は特定復興再生拠点区域(復興拠点)内にある。春季例大祭は原発事故発生から約3年後に復活したが、秋季例大祭については、福島県内外に避難する氏子らが年2回集まる負担を考慮し、見送っていた。
「元の日常を取り戻そう」。8月に復興拠点の避難指示が解除されたことを受け、高倉洋尚宮司が氏子総代らと話し合い復活を決めた。首都圏の大学生らでつくる「双葉まるごと文化祭」も、例大祭に合わせた飲食ブースの出店を企画して後押しした。
氏子総代約20人をはじめ、町内外の避難先から大勢の町民が集まった。神事の後、標葉せんだん太鼓保存会が勇壮な和太鼓演奏を響かせた。三字芸能保存会による神楽は、太鼓や笛の音色とともに獅子舞を披露した。
三字芸能保存会の岩川孝一会長は「地元で披露できたことが何よりも最高」と本来の場所での奉納にうれしさをかみしめた。高倉宮司は「秋も復活できて本当に良かった。原発事故発生前のまちの姿を少しずつ取り戻していきたい」と語った。