


大相撲で活躍する福島県福島市出身の関脇若隆景関(27)=本名・大波渥さん=と幕内若元春関(28)=本名・大波港さん=の兄弟対決が2日、東京・両国国技館で実現した。師匠で元幕内蒼国来の荒汐親方(38)の引退・荒汐襲名披露大相撲で行われ、軍配は弟の若隆景関に上がった。2人は長男若隆元さん(30)=本名・大波渡さん=とともに大波3兄弟そろい踏みの相撲甚句も披露。県内からも駆けつけた多くの相撲ファンを楽しませた。
若隆景関と若元春関の取り組みは本場所では優勝決定戦でしか実現しない同部屋対決。この日一番の注目を集めた。
立ち会いから激しくぶつかった両者。右の喉輪で攻める若隆景関に対し、若元春関は突っ張りで押し返した。がっぷり四つとなってからは若隆景関が得意のおっつけで有利な体制となり、攻め込んだ。若元春関は土俵際で耐えて押し返したが、最後は若隆景関が豪快な上手投げで勝利した。
本場所さながらの真剣勝負に会場からは大きな拍手が巻き起こった。この一番には、大相撲大波3兄弟福島後援会をはじめ、本場所でも兄弟対決を実現させてほしいとの期待から福島民報社など県内の36団体・企業から計71本もの懸賞金が出された。
断髪式に先立ち、相撲甚句が披露された。相撲甚句は大相撲の巡業などで披露される七五調の囃子歌。選ばれたのは大波3兄弟のしこ名の由来となっている戦国武将・毛利元就の息子の毛利3兄弟にちなみ「土俵に輝く三つの矢」と、中国出身の荒汐親方の生き様を表現した「蒼き空より海を越えて」の2曲。十両勇輝関が歌い上げた。大波3兄弟は化粧まわし姿で初めて土俵上で顔をそろえ、合いの手を入れた。
披露大相撲では若隆景関が御嶽海関、若元春関が佐田の海関にそれぞれ、寄り切りで完勝した。
時津風一門の幕下力士によるトーナメント戦も行われた。若隆元さんや福島市出身で荒汐部屋所属の兄弟力士の大賀さん(19)=本名・丹治大賀さん=、丹治さん(16)=本名・丹治純さん=ら力士16人が出場し、決勝で大賀さんを破った若隆元さんが優勝した。
両国国技館では、大相撲大波3兄弟福島後援会をはじめ県内各地から訪れた相撲ファンらが迫力ある取り組みを見守った。「福島の力士たちに角界を一層引っ張ってほしい」と期待した。
後援会からは約100人が参加。後援会が贈った化粧まわしを着け、土俵を練り歩く若隆景関らの姿を感動した様子で見つめた。副会長の菅野日出喜さん(69)は「貫禄が出てきた福島勢の姿を見てうれしくなった。取り組みにひときわ大きな拍手が送られ、注目度の高さも感じた」と目を細めた。荒汐部屋の合宿は来年福島市で予定されており、後援会幹事長の作田謙太郎さん(52)は「今から楽しみだ」と話した。
県内経済界からも多くの関係者が駆けつけた。升席で観覧した須賀川商工会議所会頭の渡辺達雄さん(78)は「応援の輪は県内に広がっている。ぜひ多くの県民に観戦してほしい」と語った。
荒汐親方の断髪式では宮城野親方(元横綱白鵬)や鶴竜親方(元横綱)をはじめ、大波3兄弟の父大波政志さん(55)や菅野副会長、作田幹事長、福島民報社の芳見弘一社長、城南信用金庫の川本恭治理事長ら約240人がはさみを入れた。