論説

【令和の名水百選】観光誘客の呼び水に(10月10日)

2022/10/10 09:15

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 環境省は2024(令和6)年度にも「令和の名水百選」を選定する。1985(昭和60)年度の「昭和の名水百選」、2008(平成20)年度の「平成の名水百選」に続く第3弾となる。県土は7割近くが森林に囲まれ、山々から湧き出る数多くの清流がある。候補地に名乗りを上げて、古里の名水を地域活性化に役立ててほしい。

 昭和版は水質が重視され、県内から磐梯町の磐梯西山麓湧水群と北塩原村の小野川湧水の2カ所が選ばれた。平成版は、住民らが保全活動にどれだけ関わっているかなどが評価の対象になり、福島市の荒川、喜多方市の栂峰[つがみね]渓流水、新地町の右近清水の3カ所が百選入りした。

 令和版は、過去2回とは視点を変えた選び方になる見通しだ。環境省によると、水質だけでなく、水辺を活用している実績などを評価する。例えば、子どもを対象にした学習や水遊びなどのレクリエーション、水をテーマにしたイベントなどを想定している。2023年度予算の概算要求に関連経費を計上し、応募条件などの詳細を煮詰める。

 昭和版、平成版の県内5カ所は名水選定を好機と捉え、知恵を絞った取り組みを続けている。

 磐梯西山麓湧水群を有する磐梯町は、官民一体の試みが全国的にも注目を集める。2020年に県内初の「磐梯名水乾杯条例」を制定し、名水に由来する町産の地酒や農作物でつくったジュース、野草茶などあらゆる飲み物を宴席や催しなどの乾杯で使うよう呼びかけている。古里に誇りを持ったり、地産地消が一層高まったりするなどの効果が生まれているという。

 喜多方市と北塩原村などはペットボトルのミネラルウオーターとして商品化し、地元で販売している。北塩原村はふるさと納税の返礼品にして全国にPRする。福島市は民間組織が中心となって年数回、河川敷の除草やごみ拾いを展開する。新地町では、地域住民らが休憩所や遊歩道の設置、桜の植樹などの環境整備に力を入れている。

 国内の水道水は水質やおいしさが海外からも高く評価されている。新型コロナ禍後のインバウンドを見据え、貴重な水資源を観光誘客の新たな呼び水として売り込むだけの価値はある。限りある資源を有効活用することは、将来的に生態系の保全にもつながる。昭和、平成、令和と三つの時代を結ぶ「名水ブーム」を、自然豊かな本県から盛り上げていきたい。郷土の環境を末永く守る機運は一段と高まるはずだ。(小林和仁)