
合併前の旧常葉町時代から続く福島県田村市と東京都中野区の絆を一層強めようと、市内の一般社団法人スイッチは、森づくりをテーマにした交流事業を始める。中野区で15、16の両日に開かれる「花と緑の祭典2022秋」で来場者にクヌギの種(ドングリ)を配布し、育ててもらう。東日本大震災からの復興に歩む田村市の現状や、市内の豊かな里山に関心を持ち続ける象徴にする。
事業の主な流れは、ドングリを受け取り育ててくれる人に、田村市のさまざまな情報を定期的に発信する。クヌギが育ったころ、植樹のイベントを市内で開き交流する。木の成長を見守りながら末永く、市との関係を保ってもらう。市内や近隣で集めたドングリ約200個と、苗木10本を用意した。
クヌギをはじめとしたドングリのなる木は、豊かな里山を代表する樹木だ。震災と東京電力福島第1原発事故発生後、森林と、山菜などの里山資源の再生は大きな課題となっている。
取り組みを通して、生態系の維持や防災など多様な面で森林が果たす役割への理解促進につなげたい考えだ。市が目指す「昆虫の聖地」にも豊かな里山の維持は欠かせず、カブトムシやクワガタなど、市が「売り」にする虫に注目してもらう契機にもする。
市と中野区は1982(昭和57)年、旧常葉町と区が姉妹都市を締結した。区が常葉町に少年自然の家を置いたのがきっかけだった。区の子どもたちが毎年大勢、常葉町を訪れ、友好を深めた。震災で自然の家は大きな被害を受けて廃止となり関係強化が求められていた。
今回の事業を企画したスイッチの服部諒さん(21)は「田村の森に愛着を持つ人が増え、都市間のつながりを創出できればうれしい」と期待している。