福島県内の選挙

【福島県知事選 7つの生活圏は今】(7・完)県中地域 事業承継どう進める 空港利用回復必須

2022/10/22 09:50

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丁寧に靴を手入れする小林さん。後継者はおらず、将来的な閉店を覚悟している
丁寧に靴を手入れする小林さん。後継者はおらず、将来的な閉店を覚悟している

 知事選に加え、県議補選が20日に告示された郡山市。街中を歩く市民が候補者ポスターに目を留める。新型コロナウイルス感染拡大、物価高の影響で県内最大の商都・郡山の行方を心配する有権者は多い。事業所が多く立地する土地柄だけに、厳しい経営や事業主の高齢化などを背景とした事業承継が喫緊の課題となっている。

 県によると、郡山市の商工業者数は県内最多の約1万3700事業所で、全体の2割近くを占める。多くが中小企業だ。郡山商工会議所が2021(令和3)年度に会員に実施した経営実態アンケートでは、回答した約1300事業所のうち、事業承継について「未定」が最多の38%を占めた。「自分の代で廃業するつもり」は17%に上る。

 「団塊の世代」の現役経営者は70歳を過ぎた。郡山市にある県事業承継・引継ぎ支援センターで統括責任者を務める若菜正典さん(61)は「後継者不在で廃業する企業が増えれば雇用や技術力が失われ、地域の衰退につながる」と危機感を募らせる。

 県は商工団体などを対象に、企業の事業承継を支援する人材育成などに力を入れているが、個々の事情に寄り添うには人手も時間も足りないのが現状だ。

 市中心部にあるコバヤシ靴店は1933(昭和8)年に創業した。2代目の小林健さん(91)は靴職人として東京で修業を積み、約60年前に父から店を継いだ。既製品販売に加え、オーダーメードにも対応し、春は就職などに合わせて靴を注文する若者が訪れる。

 ただ、後継者はいない。子どもは別の職業に就き、事業承継という言葉にもなじみがなかった。「(人を探すには)今からでは難しい。自分の代で終わりだ」。小林さんがさみしそうにつぶやく。「早い段階から事業承継に理解を深め、気軽に相談できる機会が増えれば、残る店もあるはず。各地に窓口を置くなど、県には積極的に支援してほしい」と話す。

  ◇    ◇  

 新型コロナウイルス感染拡大で、全国的に空港の利用が落ち込んだ中、福島空港を利用した搭乗者数は開港以来最低水準にある。来年開港30周年となり、地方空港としての役割を果たすため、利用状況の回復が不可欠だ。

 搭乗者数は東日本大震災以降、国内線・国際線を合わせて年間20万人半ばで推移していた。2018(平成30)年度に震災以降最高の26万7356人に達したが、新型コロナの感染が急拡大した2020(令和2)年度は7万人弱に急落した。

 県の利用促進キャンペーンなどが機能し、2021年度は約9万7千人、今年度は9月末時点で約8万人と回復傾向にはあるが、以前の水準には遠い。

 須賀川市など周辺の8市町村で構成する福島空港活性化推進協議会は団体利用に対する補助事業などを行っている。今月からは助成対象人数を引き下げ、より利用しやすい内容とした。空港誘致活動に携わった元須賀川青年会議所(JC)理事長の堀江祐介さん(70)は「観光だけでなく、時代に即した利用を促す仕組みが必要」と指摘する。

 定期便の増便などのためには、医療や教育などを空港利用につなげる施策をはじめ、空港から主要施設や駅などに移動する「2次交通」の整備なども必要とみている。「空港の利活用の効果は県全域に波及する。県内規模で利活用の機会を考えていくことが大切だ」としている。