震災と原発事故発生後、多くのサッカー選手が復興支援で本県を訪れ、先の見えない生活を送っていた県民を勇気づけた。時を共にした思い出を温めてきた人は多いに違いない▼現在の日本代表では、ゴールキーパーの川島永嗣選手が楢葉中の生徒と給食を食べ、「一緒に困難を乗り越えよう」と励ました。長友佑都選手は郡山市の避難所で子どもたちとパス交換し、「世界一のサイドバックを目指す。みんなも夢を諦めないで」と声をかけた。柴崎岳選手は広野町で小中学生とボールを追った▼川島選手は2011(平成23)年にベルギーで行われた試合で、対戦相手の応援席から原発事故に絡めたやじを受け、厳然と抗議した。震災後初のワールドカップ(W杯)となったブラジル大会は、全試合に出場した。零封したギリシャ戦の好守から、被災地の思いを背負う覚悟が伝わってきた▼W杯カタール大会が、あす20日に開幕する。日本は同じ組で強豪のドイツ、スペインと戦う。長友選手は髪を金色に染めた。川島、柴崎両選手を含めベテランが若手を鼓舞し、難関の1次リーグに挑む。ひたすら前進あるのみだ。被災地から11年分の感謝を込めてエールを送る。