トンネルの先には…(11月27日)

2022/11/27 09:30

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 トンネルは物事がはかどらない時を例える言葉に使われる。作家の三浦綾子は著書「太陽はいつも雲の上に」に記した。〈長いトンネルにも限りがある。いつでも希望を持って歩みたい〉。小説や映画の一こまに描かれることもある▼元々トンネルは障害物を避けて人や物の流れを安全にするための施設だ。歴史は意外と長い。土木学会によると、人間が交通用に造った最古の記録は、約3700年前の中東ユーフラテス川をくぐるトンネルだった。国内では大分県中津市の邪馬渓にある「青の洞門」が約200年前に完成した▼天栄村の国道118号の鳳坂[ほうさか]峠に27日、長さ約2500メートルの「鳳坂トンネル」が開通する。2013(平成25)年度に事業が始まり、9年を費やした。峠は急勾配と急カーブが続く。冬の間は路面が凍り、運転手泣かせの難所だ。同じ村内ながらも天気予報の中通りと会津の区分は峠の辺りと重なる▼東側から入ったトンネルを抜けると、分水嶺の羽鳥湖と風光明媚な高原が広がる。開通後は安全な往来と観光の振興をもたらす。出口の先には、何かがある。これからの季節、川端康成が著した物語の一節を実感できるかもしれない。