論説

【花愛でる生活様式】県民運動で推進を(12月13日)

2022/12/13 09:10

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 県産花の消費拡大に向けて県は「ふくしまの花を愛[め]でるライフスタイル」の普及を目指している。自宅や職場など生活のさまざまな場を花で飾ったり、特別な日に花束を贈ったりして地産地消を促進し、花き農業の振興につなげる。暮らしに憩いが生まれ、農家の応援にもなる。全国有数の生産県ならではの県民運動として広げていきたい。

 花き栽培は遊休農地の有効活用策として県内各地で進む。変化に富んだ気候や豊かな土壌が品質を磨き、昨年度のカスミソウの出荷量は894万本で全国3位、リンドウは439万本で4位、トルコギキョウは334万本で7位になるなど高い水準を維持してきた。ただ、出荷先は、品種によっては大きな市場を抱え、高値で取引される首都圏に流れる傾向にある。

 愛でる運動は県内の消費を掘り起こし、高める狙いがあり、手軽に実践できるのが持ち味だ。玄関に飾って来客を迎えたり、仕事場に彩りを添えたりしている県民、事業所は多いだろう。花の種類や数、置き場を増やすだけで運動の輪は広がる。県や市町村も予算をやり繰りし、率先して取り組んでもらいたい。行政をより身近に感じられる。

 県は、県内で生産される花の出荷時期を示すカレンダーをホームページで紹介している。これを活用し、春はダリア、夏はカラー、秋はリンドウ、冬はシクラメンなど四季折々の県産花を家庭や職場で購入したり、友人や取引先などに感謝を込めて贈り合ったりする日、週間、月間を県などが独自に設けるのも意識付けには効果的だ。気持ちが通い合い、結びつきも強まる。ぜひ検討してほしい。

 「花育」が情操教育の面で注目されている。福島市と昭和村は、生産団体の協力を得て小学校で花植えや生け花などに取り組み、思いやりや自然を大切にする心を育んでいる。他の市町村も積極的に取り入れてはどうか。

 愛でる運動を拡大していく上で、生産基盤の強化は欠かせない。国の農林業センサスによると、県内の切り花の作付面積は2020(令和2)年度が415ヘクタールで、5年前の前回調査より54ヘクタール減少した。花き・花木農家は666戸で134戸減るなど、担い手の高齢化と新規就業者の確保が課題になっている。

 県は県園芸振興プロジェクトに基づき、人材育成とともに新しい品種の開発や生産力の強化、作業の省力化などを進めている。JAなど関係団体との連携を強め、持続可能な産地づくりを一段と推進する必要がある。(安島剛彦)