東日本大震災・原発事故

賠償額目安は「上限でない」明記へ 中間指針見直しで原賠審が合意 20日に第5次追補とりまとめ

2022/12/13 09:42

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 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)は12日、福島県の東京電力福島第1原発事故に伴う国の賠償基準「中間指針」の見直しで、指針で示す損害額の目安が賠償の上限ではないと初めて明記する方向で合意した。指針に明示されていなくとも、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められれば全て賠償の対象となることも強調する。東電が中間指針を理由に原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を拒否するケースが相次いでいる実態を重く捉え、東電に確実な賠償を促す狙いがある。20日の次回会合でこれまでの変更点や賠償額などを中間指針第5次追補として取りまとめる予定。

 原賠審は第5次追補の素案を協議した。基本的考え方の項目に、第4次追補までは記載がなかった「本審査会の指針が示す損害額の目安が賠償の上限ではない」との文言を盛り込んだ。指針には示されず個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害が認められる場合の記述には「全て」を追記し、「全て賠償の対象となる」と記した。

 委員による原発事故被害者への聞き取りで、東電が裁判外紛争解決手続き(ADR)で中間指針の賠償額を上回る和解案に応じないなどの実態を直接確認し、中間指針への明記が必要と判断した。慶応義塾大大学院法務研究科の鹿野菜穂子教授は「被災者の声を踏まえ、今まで以上に明確に示すことに大いに賛成する」と述べた。

 また、自主的避難等対象区域の項目で、対象区域以外の地域でも「個別具体的な事情に応じて賠償の対象と認められ得る」と明記した。東京大の中田裕康名誉教授は基本的考え方の中にも、賠償対象として示す区域でなくとも個別具体的な事情に応じて賠償対象となることを示すべきだと主張した。

 原賠審会長代理の樫見由美子稲置学園監事は個別具体的な事案で機能するのがADRだとし、「中間指針の考え方を体現するのがADRだ。ADRで提示された和解案を東電が尊重すべきと記載してほしい」と求めた。