JR東日本が収支を公表した県内の磐越東線、水郡線、磐越西線、只見線の赤字4路線を巡り、県は鉄道の維持に向けた議論を年明けから本格化させる。人口減少や過疎化が進む中で利用を促進し、採算性を改善していくのは難しい問題ではある。一方で、鉄道はつながっていてこそ災害被災地などに大量の物資を運べるなど公共性が高い。沿線市町村、鉄道事業者との三者一体で持続可能な方策を導き出すよう求めたい。
磐越東線については、県と郡山、いわき、田村、三春、小野の沿線5市町による検討組織が年度内にも発足する。利用者を増やす取り組みや鉄道を生かした地域づくりを探る。水郡線は、11市町村でつくる既存の活性化対策協議会に県が構成員として加わる。磐越西線は、8月の記録的大雨で崩落した橋梁[きょうりょう]の来年春の復旧を待って組織の枠組みを固める方針だ。
只見線は、既に沿線市町村やJR東と検討会議を設け、第2期利活用計画の策定を進めている。最適なダイヤの在り方、景観整備、観光資源の磨き上げなど数多くの施策が打ち出される見通しだ。これらの取り組みは、県内の先行事例になる。只見線の成果を他の路線の議論に生かしてもらいたい。
磐越東線を除く3路線は隣県とつながり、県境付近の乗客数は他の区間と比べて少ない。県は広域自治体として全県のネットワークを支えるとともに、新潟、茨城両県とも連携し、相互に利用者を増やす施策を講じるべきだ。
議論の前提として、JR東による詳細な情報開示が欠かせない。ローカル線の損失分を補ってきた黒字路線の利益も公表すれば、赤字路線維持に向けた区間ごとの収支をどの程度改善すべきかの目安として生かせる。駅別、時刻別の乗客状況が分かれば、より具体的な利用促進策を構築できるだろう。
専門家から「JRは首都圏の定期券の割引率を下げることで収支を改善できないのか」といった意見も出ている。こうした個別の見直しを積み重ねると同時に、地方路線を存続させる鉄道事業者の社会的な役割も、幅広い視点で考えていく必要がある。
廃線で最も影響を受けるのは沿線市町村や住民であり、鉄道があるのは当然という意識は変えていかねばならない。今は利用していなくても将来、車を運転できなくなれば公共交通が頼りになる。一人一人が自分事として捉え、議論を注視してほしい。機運の高まりが路線を守る第一歩になる。(角田守良)