地域の農林水産物のブランドを守る地理的表示(GⅠ)保護制度の登録が県内で進んでいる。南会津、只見、下郷の3町で生産される南郷トマトに加え、今年は郡山市の阿久津曲がりねぎ、川俣町の川俣シャモが対象になった。さらに4品目の申請が出されている。生産管理の安全認証制度GAPは普及している一方で、GIは審査が厳格などの理由で件数が少ない。GAPと並ぶ産地の基盤強化策として、行政や関係団体による一層の支援を求めたい。
GI認定産品は、地域ならではの環境下で育まれた品質と社会的評価が結び付いた知的財産として保護される。GⅠマークが付され、国が類似品を取り締まり、罰則も科す。本県を含め国内で117品目が認定されている。しかし、導入7年目で認知度はまだ低く、収益にどうつなげるかが課題だ。
JA会津よつばによると、南郷トマトは2018(平成30)年の認定後、同じ産地名を付けた模倣トマトはなくなったものの、制度が知られていないため収益には反映されにくい現状にある。川俣シャモ振興会は3月の登録後、国内の認定産品を集めたカタログ販売に加わったが、現時点では出荷増への手応えをつかみきれないのが実情のようだ。
阿久津曲がりねぎは10月の全国ねぎサミットに唯一の認定産品として出品し、最も早く完売した。ただ、登録を受けて実質的に初の出荷期を迎え、どの程度の効果があるのか手探りの面もあるという。
GI制度は、安全で高品質な商品を求める消費者を呼び込むのに役立つ。国は主な登録団体に食品業者などを交えた協議会を今年初めに発足させた。首都圏などの有名レストランで認定食材を使用するなどして知名度向上を図っている。大消費地で実施する意味はあるとはいえ、地産地消による産地育成も重要だ。生産地にも広げるよう検討すべきではないか。
伊達地方の「伊達のあんぽ柿」と田村市の「たむらのエゴマ油」の審査は最終段階に入っている。JA会津よつばかすみ草部会は「昭和かすみ草」、会津養鶏協会は「会津地鶏」を申請している。件数が増えるのを機に県内の登録団体を組織化し、連携して振興に当たる仕組みづくりも提案したい。
GAPについて県は、2030年度までに1800経営体での導入を目指している。地域の特性に根差したGI登録が進めば、県産品のブランド力は高まる。申請作業や研修などを積極的に後押ししてほしい。(安島剛彦)