西郷四郎没後100年(12月27日)

2022/12/27 08:58

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 会津藩士の子息で柔道の天才とうたわれた西郷四郎が没して100年になる。小説「姿三四郎」の主人公や夏目漱石の「坊ちゃん」に登場する山嵐のモデルとの説がある。人生は波瀾[はらん]万丈だった▼戊辰戦争後、旧藩領の津川(現新潟県阿賀町)で幼少期を過ごす。17歳で上京し、柔道の父・嘉納治五郎の講道館で頭角を現した。1886(明治19)年の警視庁武術大会で、身長150センチの小柄な体を巧みに使い、178センチの相手を秘技「山嵐」で空中高く投げ飛ばした。まさに柔よく剛を制す。さぞかし痛快だったろう▼4年後、講道館から突如姿を消した。大陸に渡ろうと夢見たようだが結局、長崎市の新聞社に勤めた。鍛えた技は衰えず、乱暴者の外国人集団を次々に投げ倒したとの逸話が残る。中国で辛亥革命が起きると、家族らに近県旅行と偽り現地取材に向かった。豪胆ながら病には勝てず、1922(大正11)年12月23日朝、56歳で世を去った▼破天荒さの根底には、朝敵とされた会津人の反骨心があったに違いない。今の若者にはなじみの薄い人物だろうか。何かと横道に外れがちならば、何事も恐れず挑む一直線の歩みをひも解いてみるのもいい。