ワインの味(1月7日)

2023/01/07 09:00

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 ふくしま逢瀬ワイナリーが郡山市郊外に誕生して今年で8年目を迎える。最近は国内外のコンクールで入賞を重ねるなど、評価は高まっている▼「ワイン造りはブドウ作り」といわれ、出来の8割は果実で決まる。提供しているのは市内の農家13戸。「地元からワインを」との夢を抱き、施設稼働に合わせて栽培を始めた。市内は雨が多くて病気が起きやすい。日照量が少なく、収量も上げにくい。不利な条件に立ち向かい、挑戦を続けている▼小まめな除草や葉かき、摘果…。質を求める分だけ手間がかかる。人手は慢性的に足りず、農家の高齢化も進んでいる。昨年は、自室に閉じこもりがちだった男性6人が作業に加わった。自立を支援している団体が仲立ちした。丁寧な作業のおかげもあって質の良いブドウが採れた。今年も一緒に携われるよう、多くが願う▼市内の40代男性は10年余り外出できなかった。緑の畑で働くうちに、仕事に没頭する感覚を思い出す。何よりワイン造りにやりがいを見つけた。完成したら、感謝を込めて母親に贈るという。一粒一粒が添い合うブドウの房のような、人や親子がつながる物語が、新酒の逢瀬ワインにはある。