福島県ウオーキング協会は今秋、県内全59市町村でウオーキングイベントを行う事業をスタートさせる。県民の健康増進を図るとともに、各市町村の新たな魅力発見と観光交流人口の拡大につなげる。昨年、双葉町で特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除されたのを機に実施を決めた。関係者は「被災地を含めた地域の活性化と、県民の健康寿命の延伸につなげたい」と意気込む。
事業は「歩こうふくしま59」と銘打ち開催する。県内約10カ所で毎年開いている協会認定大会に加え、新たに年間20回程度のウオーキングイベントを開催。約3年間で59市町村を網羅する。初回の大会は福島市で9月に予定している。
大規模自治体では参加者が千人以上となる見込み。それ以外の市町村でも100人前後の参加を予定している。59マスの枠を記載した「パスポート」も作成。全市町村のスタンプを集めた人には記念品をプレゼントするなど、県内各地の大会への参加を促す。協会長の鈴木康郎さん(79)は「歩くことで分かる土地の魅力があるはず。飲食や特産品の購入にも結びつけたい」と地域活性化への思いも込める。
厚生労働省の2020(令和2)年度のまとめでは、県内の平均寿命は男性が80・60歳で全国45位、女性は86・81歳で同46位。生活習慣病の要因となるメタボリック症候群の割合もワースト4位と低迷している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出を控える人が増えており、大会をきっかけに運動の習慣化を図り、健康指標の改善につなげる。
コースは初心者も参加しやすく、景観を楽しむことができる5~10㌔のコースを設定する予定だ。鈴木さんは「会津なら磐梯山をバックに、浜通りなら海が見える道がいい。楽しみながら健康づくりに取り組める事業にしたい」と準備に意欲を見せている。
昨年まで全町避難が続いた双葉町では、これまで健康増進イベントはほとんど開かれなかった。須賀川市に避難している町内浜野行政区長の高倉伊助さん(66)は「健康のためにも参加したい。地域のにぎわい創出にもつながるはず」と期待を寄せた。