
政府は、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域に、復興拠点と同様に居住が再開できるよう環境を整える「特定帰還居住区域」(仮称)を新たに設定する方向で検討に入った。復興拠点外の避難指示を解除するための新制度で、福島復興再生特措法を改正し創設するのが有力だ。新区域は帰還した住民の日常生活に必要な宅地、道路、集会所、墓地などを含む範囲を想定しており、国費で除染などを進める。福島県や市町村の意向を踏まえた上で法制化を目指す。
関係者によると、新区域の設定要件は素案の段階だが①放射線量が一定基準以下に低減②一体的な日常生活圏を構成し、原発事故前の住居で生活の再建が可能③計画的で効率的な公共施設などの整備が可能④復興拠点と一体的な復興再生―などが想定されている。復興拠点を軸とした面的な広がりを目指す。基幹産業である農業再開に向けた環境整備なども柔軟に検討する。
市町村長が住民の帰還意向などを踏まえ、新区域の範囲設定や公共施設整備などを盛り込んだ復興再生計画を作成する。首相の認定を受けられれば、特例措置として国費負担で除染などを実施し、道路などのインフラ整備を代行する案が有力となっている。
政府は2020年代をかけて、復興拠点外に戻る意向のある住民全員の帰還を目指す方針を決定したが、南相馬、富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘7市町村に設定された帰還困難区域のうち、復興拠点外の方向性が示されていない。2017(平成29)年の福島特措法改正を受け、南相馬を除いた6町村で復興拠点が設けられたが、避難生活を続ける住民をはじめ県や町村からは拠点外の避難指示解除方針を早急に示すよう求める声が上がっていた。
政府は住民の帰還意向を個別に把握した上で帰還に必要な場所を除染する考えで、大熊、双葉両町の一部地域で2023(令和5)年度に先行除染を始める。除染から避難指示解除までのモデルケースを確立するためで、居住地の状況に応じた類型化も検討していく方針。
復興拠点の面積は帰還困難区域全体の約8%にあたる約27平方㌔で、昨年は大熊、双葉、葛尾3町村で避難指示が解除された。今年は春までに富岡、浪江、飯舘3町村で解除される予定。