政府は13日、官邸で関係閣僚会議を開き、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出の実施時期の目標について春から夏ごろとする方針を確認した。風評対策など事業の指針となる行動計画を改定。これにより政府は「対策はおおむね出そろった」との認識だ。ただ、漁業者を中心に理解醸成が進んでいないにも関わらず実施時期が明示されたことや行動計画を大きく改定しなかった点について福島県内関係者からは反発の声も上がった。
改定した行動計画では、地元関係者による処理水の分析・評価作業への立ち会いの仕組みづくり、国と小売・流通業界による風評対策の会合の随時開催、官民合同での「常磐もの」の消費拡大対策などに取り組むとした。
海洋放出の実施時期は東電による放出設備の設置工事、原子力規制委の使用前工事検査や国際原子力機関(IAEA)の報告書の取りまとめなどのスケジュールを踏まえ、遅くとも今夏までに始めることを初めて明示した。
閣僚会議に出席した松野博一官房長官は「安全性確保と風評対策に万全を期すとともに、地元関係者の懸念に耳を傾け、対策などの丁寧な説明を尽くす」と述べた。
■理解醸成進まず福島県内から反発の声
漁業者を中心に理解醸成が進んでいないにも関わらず実施時期が明示されたことや行動計画を大きく改定しなかった点について県内関係者からは反発の声が上がった。処理水への正しい理解が広がっていないとして県内のあらゆる産業、市町村議会などから新たな風評発生への懸念や慎重な対応を求める声が根強い。
漁業者支援の基金の設置などを受けても、野崎哲県漁連会長は「断固反対の立ち位置は変わることはない」と改めて強調した。さまざまな対策が示された点については「漁業全体に対して風評被害をもたらさないことが前提だ」との認識を示した。政府の具体的な対策がまとまったとの見解などに対し、轡田倉治県商工会連合会長は「新たな風評被害が発生しないよう、国が東電に任せることなく、前面に立つべきだ」と断じ、より万全な対策を求めた。
時期の明示を疑問視する声も上がった。内田広之いわき市長は国民や関係者の理解は不十分との認識を示した上で「時期ありきではない。『関係者の理解なしにいかなる処分も行わない』との当初の約束を履行してもらいたい」と厳しく注文した。県の担当者は「県民、国民の理解を深めるのが重要だ」とし、国内外へのさらなる情報発信を求めた。
東電は行動計画の改定に当たり「関係者の懸念や関心に向き合い、科学的根拠に基づく情報を国内外に発信し、理解を深めてもらえるよう努める」と従来の見解を示した。