東日本大震災・原発事故

卓球で地域の絆 福島・田村市大越町栗出地区の高齢者サークル 震災後に活動、結成10年

2023/01/15 09:40

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卓球を通して地域の絆と健康を維持しているメンバー
卓球を通して地域の絆と健康を維持しているメンバー

 福島県田村市大越町栗出地区の高齢者でつくる卓球サークルは、結成から今年で丸10年を迎える。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生でふさぎがちになった気持ちを明るくしようと始まり、毎週1回、プレーを楽しむ。和気あいあいと体を動かし、地域の絆を強めている。

 金曜日の午後1時前、地区の集会所「転作技術研修センター」にお年寄りが次々とやって来る。サークルの活動日だ。最年少は68歳、最高齢は88歳。2台の卓球台を囲み約2時間、心地よい汗を流す。「ありゃー、失敗」「よし、いいぞ」。元気な声とラリーの軽快な音が響く。

 結成のきっかけは本田芳一さん(80)の声かけだった。震災と原発事故が起きた後、お年寄りが自宅に閉じこもっているのが気になった。このままでは地域の元気がなくなってしまうと危機感を覚えた。卓球なら誰でも気軽にできるのではないかと考え、賛同者を募って2013(平成25)年秋に始動した。今では毎回、十数人が集まる。

 最高齢の佐藤啓治さん(88)は発足当初から参加し、「毎週、楽しみにしている」と話す。別のメンバーは「適度な運動で最高。『病院いらず』だ」と笑う。本田さんは「卓球で外出が促され、健康づくりにつながっている」と喜ぶ。

 大会には参加しておらず、指導者もいない。しかし、サークルは地域に欠かせない存在になっている。本田さんは「地域に笑い声が響くのは素晴らしいこと。まだまだ続けていきたい」と意気込んでいる。