郡山市の市道交差点で起きた4人死亡の交通事故は新年のとそ気分を打ち消す大惨事だった。事故原因は捜査中だが、信号機や一時停止の標識がないなど道路環境に課題のあったことが分かってきた。事故の発生した阿武隈山地は幅員が狭く、見通しの悪い道路が多い。山間部の道路を全県で総点検し、安全対策を急ぐべきだ。
事故は2日夜、郡山市大平町で起きた。優先道路を走っていた市内の4人家族同乗の軽乗用車左側面後部に、福島市の男性会社員の乗用車が衝突し、軽乗用車は炎上、家族全員が死亡した。男性会社員は自動車運転処罰法違反(過失運転致死)容疑で郡山署から送検された。
軽乗用車はカーブの続く坂を上がり、乗用車は緩やかな坂を下りてきた。日中でも左右の安全に注意しないと危険を感じる。交差点付近はほぼ直線で交わっているが、中央線の白線は消えかかっており、県公安委員会や郡山市は一時停止標識やカーブミラー設置などを進めている。
郡山市は毎年度、14の行政センターや市教委などを通じて道路の整備要望箇所を調べている。今年度は千カ所を超す要望が寄せられたが、今回の事故現場は含まれていなかった。事故を受けて総点検を実施したところ、16日までに県市道合わせて約200カ所が危険箇所とされた。交差点でどちらが優先道路か分かりにくい、出合い頭に衝突する可能性がある、速度が出やすいなどが理由とされ、道路を管理する国、県や県公安委員会などと対応を急ぐ考えだ。
県中央部に位置する郡山市は交通量が多い。慣れない道路を通る車両もあるはずだ。こうした地理的事情もあってか、市内の昨年の交通事故件数561件は、全県2702件の約5分の1を占める。
阿武隈山地の道路安全確保は郡山市の対応だけでは難しい。似た道路環境にある他市町村にとっても共通の問題だ。関係機関が危険箇所の現状をどう共有化し、安全対策を講じるかが問われる。従来は事故の多発する場所を優先する傾向にあったが、事故が起きていなくても設備面で不十分であれば改善を施す未然防止の観点が求められよう。
ただ、道路環境の向上だけで事故が減るわけではない。運転者は安全運転を心がけ、初めて通る道路では交通環境に十分気を配る必要がある。
郡山市の事故現場では花を手向ける人が絶えない。悲惨な事故を二度と起こさないためにも、関係機関が連携をより強め、危険箇所解消に取り組んでほしい。(鞍田炎)