【米ワシントンで福島民報社報道部県政キャップ・斎藤直幸記者】訪米中の内堀雅雄知事は19日(日本時間20日)、産地間競争が激しさを増すコメや日本酒の国内市場は消費が飽和状態にあるとして、より市場規模が大きく販路開拓が見込める米国を中心とした海外輸出に活路を見いだす方針を示した。現地での全日程を終え、報道陣の取材に明らかにした。現地の食品関係者から福島県産しょうゆ、みそ、こうじなどの引き合いが多く、「醸造王国ふくしま」を海外戦略の強みとして打ち出す意向だ。
2021(令和3)年9月に日本産食品の輸入規制を撤廃した米国への訪問で内堀知事は、県産米の年間100㌧輸出、高級ワイン店での県産酒コーナー開設などの成果を得たと振り返り、「国内の消費は飽和状態にあり供給を減らさなければならない厳しい現実があるが、世界に目を転じれば市場は無限に広がっている」と手応えを口にした。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の福島という否定的なイメージは「直接会って話せば、一気にオセロの黒が白に変わる。福島に対する尊敬の念が加わって肯定的な気持ちになる。これはチャンスだ」と強調。「福島の地名が持つ特別なヒストリーを伝えることで、無限の可能性がある米国市場のみならず諸外国で次の市場を手に入れることができる」と続けた。
一方で、知事の海外渡航は新型コロナウイルス感染症が世界的に流行する前の2019年10月にドイツやスペインなどを訪れて以来、約3年3カ月ぶり。「対面での交渉が続けられていれば福島の復興にプラスになっていたはずだ。失われた3年間の重みを感じている」とも語り、「ここから再出発して挽回したい」とした。
福島第1原発の放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出を巡っては、米国務省や米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)を訪問した際に高官らから「福島の正確な情報発信がまだまだ弱い」「知事が直接来て、自分の言葉で話すことは非常に理解促進に役立つ。継続してほしい」などと求められたという。
県産品の輸入規制はロシア、中国、韓国、台湾、香港など12の国・地域で残っている。内堀知事は科学的で客観的な情報発信を更新し続け、本県に来て、見て、感じてもらう取り組みをさらに進めるとした。