


東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から12年となった11日、福島県内の被災地では、若者や子どもたちが古里の明るい未来を願い、夢に向けて歩んでいくと誓った。「自分たちが震災を次の世代に伝えていく」。未来を担う若者は記憶をつなぐ決意を新たにした。
「私たちは震災の記憶を言葉にできる最後の世代」。双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で開かれた県の「3・11メモリアルイベント」で、語り部として活動する原町高2年の佐藤菜々香さん(17)が思いの丈を口にした。
震災発生時は5歳。南相馬市の自宅で被災し、原発事故により避難を余儀なくされた。避難先に友人はおらず、心ない言葉をかけれた時もあった。語り部を始めたのは高校1年生の時。県の催しに参加し、自分の歩みを振り返ったのがきっかけだった。「避難生活の経験を伝えて教訓をつなぎたい」と決意した。
未曽有の複合災害を知らない若い世代が増える中、教訓を語り継ぐのが「役目」だと感じている。将来は教育に携わるのが夢だ。「子どもたちに困難を乗り越えるためのヒントを与える人になりたい」と誓う。
県の東日本大震災追悼復興祈念式の「若者のことば」では、会津高2年の林文子さん、渡辺隼太朗さん、高橋桜さん=いずれも(17)=が震災と原発事故の記憶を引き継いでいくメッセージを広く発信した。
10年前に東京から引っ越してきた林さんは、過去と現在の福島を知り、向き合っていく覚悟を語った。渡辺さんは会津地方に住む若者の目線で、福島の復興の過程を紹介した。高橋さんは富岡町へのバスツアーに参加した経験を語った。文章を読み上げる途中に、故郷を離れた人たちを思い涙を浮かべる場面もあったが、最後まで懸命に言葉を紡いだ。
林さんは年下のきょうだいら身近な人に、渡辺さんは会津を訪れた観光客に、高橋さんは交流サイト(SNS)を使い世界中の人に情報を伝えていくという。「震災を絶対に風化させない」と力を込めた。
各地で行われた追悼行事の会場には休日ということもあり、子どもたちの姿が目立った。会津若松市にある大熊町の義務教育学校「学び舎(や) ゆめの森」に通う8年生の石井埜乃佳(ののか)さん(14)は町内で催された追悼イベントの会場に、町の復興を願い折り鶴を飾った。
震災当時は2歳。新年度に学校が町内で再開するのに合わせ、古里に引っ越す。これまでの授業で地域の歴史を学び、「大熊で暮らすのが楽しみ」と心待ちにする。将来は大熊にペットショップを建てるのが夢だ。「大熊に住んで復興に貢献したい」と未来を描く。
楢葉町の楢葉中3年の山内脩平さん(15)は町コミュニティセンターで開かれたシンポジウムの一環で町消防団員とともに豚汁の炊き出しを行った。震災時は3歳で、当時の記憶はあまりない。学校授業などを通して地元で起きた出来事を学ぶうち、災害に備える大切さなどを伝えたいと考えるようになった。「万が一の事態を経験し、防災への意識を高めてほしい」と願った。