東日本大震災・原発事故

復興進む町、駆け抜ける「ツール・ド・ふたば」開幕 福島県大熊町と双葉町の国道6号

2023/04/16 09:55

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JR双葉駅前を出発するライドイベントの参加者
JR双葉駅前を出発するライドイベントの参加者
思い出が詰まった国道6号を疾走する渡辺さん
思い出が詰まった国道6号を疾走する渡辺さん
運営に協力した日本競輪選手会福島支部の(後列左から)渡辺一成さん、谷津田さん、渡辺正光さん、塚本さん。手前は宇佐見さん
運営に協力した日本競輪選手会福島支部の(後列左から)渡辺一成さん、谷津田さん、渡辺正光さん、塚本さん。手前は宇佐見さん

 福島復興サイクルロードレースシリーズ2023「ツール・ド・ふたば」は15日、福島県大熊、双葉両町で開幕した。全国のサイクリスト約140人が東京電力福島第1原発事故に伴う特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除で自転車通行が可能になった両町の国道6号を疾走し、復興が進む被災地の姿に触れた。

 初日は個人タイムトライアルを繰り広げた。国道6号の三角屋交差点(大熊町)をスタートし、ゴールの牛踏交差点(双葉町)までの5・7キロで競った。被災地を自転車で巡る「ライドイベント」も開催。震災遺構・請戸小(浪江町)などを訪ね、相双地方の復興の進展に理解を深めた。

 16日は13・5キロのロードレースを行う。双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館を午前9時30分にスタートし、大熊町役場本庁舎にゴールする。コース内の国道6号は午前9時20分~午前10時10分、片側通行規制となる。

 福島民報社と県自転車競技連盟、県サイクリング協会、一般社団法人みんぽうスポーツ・文化コミッションの主催。福島日産自動車の特別協賛。


■高校の部優勝 渡辺さん(平工) 思い出の道 疾走

 タイムトライアル高校生の部に挑んだ福島県いわき市の渡辺琉聖さん(17)=平工高3年=は思い出の道を疾走し、優勝した。幼い頃に国道6号を通り、浪江町の祖父母を訪ねていた。「忘れられないレースになった。かつての面影が残る場所もあり、記憶がよみがえった」と感慨に浸った。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が起きる前は週末になると父清さん(55)、母悦子さん(55)に連れられ、車で祖父母宅に向かった。豊かな自然の中に住宅や商店が立ち並び、にぎやかさも漂っていた「6号沿い」の風景は今も脳裏に焼き付いている。

 出場が決まったのは2週間前だ。福島、宮城、岩手の被災3県からの高校生招待選手の1人に選ばれた。「6号を走れるとは思わなかった」と喜び、練習に励んだ。原発事故で道沿いの景色は一変し、父がかつて店長をしていた沿道のコンビニもさら地のままだ。それでも、全国からサイクリストが集まる様子に復興を感じながらペダルをこぎ続けた。「来年もぜひ出場したい」。特別なレースを終え、充実感を漂わせた。


■競輪選手 運営に協力 双葉、いわき出身の5人

 福島県双葉町出身で自転車競技日本代表として北京、ロンドン、リオデジャネイロの五輪3大会に出場した渡辺一成さん(39)ら、いわき市のいわき平競輪場をホームバンクとする日本競輪選手会福島支部の選手5人が大会運営に協力した。競輪選手になる前、双葉町を拠点に練習を重ねた選手ばかりで「お世話になった町に貢献したい」と実現した。

 参加したのは同町出身の谷津田将吾さん(43)、宇佐見裕輝さん(37)、いわき市出身の塚本諭さん(46)、渡辺正光さん(35)。渡辺一成さんは被災地の現状を見て回る「ライドイベント」で伴走を務めた。小高工高時代の通学路がコースに含まれ、「久しぶりに自転車で走り、とても感慨深かった」と懐かしんだ。

 支部長代行を務める塚本さんは「トレーニングを積んだ双葉町は思い入れが深い。復興拠点の避難指示が解除され、自転車イベントが開かれると知り、自分たちにできることをしたかった」と参加理由を明かした。