論説

【未利用施設対策】福島市でモデル確立を(5月27日)

2023/05/27 09:21

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 地域振興のアイデアを持つ企業などに未利用施設を売却・貸与する福島市の「提案型民間活力導入制度」で、初の契約者が決まった。全国の自治体が人口減少と少子化を背景に増える廃校などの有効活用に知恵を絞っている。独自制度のノウハウや成果、課題を県内市町村と共有し、本県版の新たなモデル構築につなげてもらいたい。

 福島市の制度は民間の発想で未利用施設を活用し、地域活性化も目指す取り組みで、2022(令和4)年度に始まった。(1)将来にわたり利活用が見込めない(2)売却・貸付する上で、老朽化などの支障がない(3)引き合いの見込めない場所にある―などを条件に、廃止された学校や幼稚園、教職員住宅など6施設を選んだ。民間から利活用の提案を受け、地元の理解を得て随意契約を結ぶ。第1弾としてグッズ製造のサンワ(本社・埼玉県戸田市)が市内飯野町の旧大久保小を取得し、100人ほどの雇用を目指す。

 同社はアニメキャラクターの缶バッジやキーホルダーなどの製造を手がけている。校舎の活用には、作業ごとに教室を使い分けることで製品の混入を防げる利点があるという。小分けにされた校内は動きにくく、ものづくりの現場に不向きとの印象も受けるが、操業の形態によっては使い勝手が良いと歓迎される。学校施設に潜在的な需要があるのを証明してくれた点でも意義深い。

 市は残る5施設の利用を引き続き募集している。施設ごとの活用案を、斬新な発想を持つ若い世代を含め市民から募集するのも一案だ。サンワの事例とともに全国の企業・団体に発信し、新たな契約に結び付けてほしい。応募を待つのでなく、あらゆる機会に積極的に売り込みをかける攻めの姿勢も求めたい。

 県教委によると、2021年5月の段階で、県内の廃校267施設のうち、58施設の利用目的が決まっていない。少子化に歯止めがかからない現状では、今後さらに増える事態は避けられない。地方と都市部共通の課題であり、広域自治体である県の取り組みも必要になる。企業誘致や移住・定住促進に向けた活動を首都圏などで展開する際、未利用施設の情報も提供し、市町村側との橋渡し役を担うべきだ。(菅野龍太)