
大関昇進へ次も2桁勝利を―。福島市出身で「大波3兄弟」の次男の新関脇若元春(29)=本名・大波港、荒汐部屋=は、大相撲夏場所で10勝5敗と勝ち越し、先場所の11勝に続く2桁勝利を収めた。念願の技能賞も獲得。来場所で12勝すれば昇進目安の直近3場所33勝となり、戦後初となる福島県出身の大関誕生の可能性を大きくたぐり寄せる。「初の賜杯も目指して」と県民の期待は膨らんでいる。
新関脇として臨んだ今場所は、けがで休場している弟・若隆景(28)=本名・大波渥=の思いを背負った。自然と気迫がこもり、勢いづいた。初日から破竹の勢いで5連勝を挙げ、全勝で序盤戦を終えた。
6日目にして初黒星を喫したが、豊昇龍との関脇対決を制した他、驚異的な粘り腰で平幕北青鵬にうっちゃりで逆転勝ち。14日目には大関貴景勝に押し倒しで勝利し、三役力士の意地を見せた。
若元春は千秋楽を終え「いい相撲も何番かあったが、納得いかない相撲も多々あった。内容面でも力をつけていきたい」と今後へ抱負を語った。
東京・両国国技館で千秋楽の若元春の取組を見守った父政志さん(56)は「夏場所全体としての出来は良かった」と活躍をたたえた。大関昇進が視野に入り「いよいよといった感じ。来場所はさらに気合を入れてもらいたい」と話した。
■堂々の成績うれしい JR福島駅西口のPV
福島市のJR福島駅西口では28日、若元春を応援するパブリックビューイング(PV)が催された。木幡浩市長や大波三兄弟福島後援会員、地元ファンらが見守った。5敗目を悔しがる声が上がったが、新関脇の健闘に暖かい拍手を送った。
木幡市長は「夏場所では安定感のある取組が多くなった。大関とりへ来場所も福島からエールを送りたい」と語った。大波三兄弟福島後援会幹事長の作田謙太郎さん(53)は「本人が目標にしていた技能賞を取ることができた。堂々の成績で私たちもうれしい」と笑顔を見せた。
昨年の初場所で新入幕を果たし、一気に関脇へと駆け上がった若元春の躍進は、子どもたちも魅了している。福島市の鳥川小2年生の阿部優心さん(7)は「若元春がかっこ良くて、相撲が好きになった。今回も見ていて楽しかった」と話した。