東日本大震災・原発事故

福島県大熊町が環境学習施設 脱炭素へ人材育成

2023/06/27 09:40

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 福島県大熊町は東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域内の特定復興再生拠点区域(復興拠点)に環境学習施設を新設する。原発事故の教訓を踏まえ、町が目指す脱炭素社会を担う人材育成を進める。早ければ2024(令和6)年度末に完成させる考えで、町が掲げている「2040年ゼロカーボン」の達成に向けた教育拠点とする。

 町によると、県内の市町村で環境学習に特化した施設を整備するのは初めて。原発事故で全町避難を強いられた町は、再生可能エネルギーで電力を賄う地域社会への取り組みを進めている。ゼロカーボン達成時期を政府目標より10年早く設定しており、実現に向けて行動できる人材育成の拠点が必要と判断した。

 脱炭素をはじめ、気候変動問題やクリーンエネルギー、大気汚染など関連する環境分野の専門家を講師として招く。町内の義務教育施設「学び舎(や) ゆめの森」と連携し、児童生徒の知識を深めるプログラムを展開する。町民の生涯学習としても取り組める内容とする計画だ。町外からの利用も見込み、町民交流の場や災害発生時の避難場所としても活用する方向で検討している。

 施設は太陽光発電を備え、エネルギー収支を実質ゼロにするZEH(ゼッチ、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様とする見通し。今後、大学教授や建築の専門家らでつくる設計検討委員会を立ち上げ、年度内にも施設の基本構想や整備計画をまとめる。

 昨年6月に避難指示が解除された復興拠点内の町有地を建設予定地としている。今年度、基本構想策定費用などを予算化した。

 町ゼロカーボン推進課は「復興の一助となる人材を育てる。住民同士のコミュニティーを生み出せる機能もつくり、町民の帰還を後押しできる場所にもしていきたい」としている。