東日本大震災・原発事故

説明や対話「足りない」 福島県浜通りの観光・レジャー関係者 処理水放出巡り切実な声

2023/06/29 09:34

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薄磯海水浴場に海の家の開設を予定する鈴木さん。夏の放出の影響を懸念する
薄磯海水浴場に海の家の開設を予定する鈴木さん。夏の放出の影響を懸念する

 東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡り、浜通りの観光・レジャー関係者からは国や東電による説明や地元との意見交換が足りないとの声が上がる。東日本大震災と原発事故後からの復興の途上でコロナ禍に直面。客足回復を見込む夏を控え、対話や理解醸成の求めは切実だ。

 いわき市議会は28日、市役所で「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」との県漁連との約束の履行を求める決議書を東電の新妻常正フェローに手渡した。文書は観光産業や水産業、市民からの不安の声に言及しており、面会でも、ある市議が「海水浴客が来なくなるとの懸念がある」と迫った。新妻氏は「不安はあると思う。説明しなければならないと考えている」と述べるにとどめた。

 いわき市では7月15日に4海水浴場を開く。関係者が集う安全対策会議で放出への懸念が相次ぎ、市は5月下旬に国と東電に「関係者の声を受け止め、慎重な対応を求める」と求めた。ひと月たつが、薄磯海水浴場の安全対策実行委員長鈴木幸長さん(70)によると要望への具体的な反応はない。民宿「鈴亀」を営み、海の家も開く。「今後、何十年も付き合う問題。私たちの商売に関心を持ってほしい」と疎外感を抱く。

 市内でサーフショップ「flows」を営む舟部賢一さん(54)は「大臣が出るような会議に僕らは呼ばれたことはない。地元の人が意見できる場があれば良いのに」とこぼす。いわき観光まちづくりビューロー会長で、いわき湯本温泉の旅館「岩惣」の大場敏宣社長(71)も「安全性をより広く伝えないと風評が起きかねない」と話した。

 市内の鮮魚店「大川魚店」の大川勝正社長(48)は水産業関係者として国や東電の説明を受け、処理水の安全性には一定の理解を示す。「関係者と膝をつき合わせ、話し合う時間がもう少しあっても良い」と理解醸成の必要性を語った。

 経産省資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室の担当者はサーフィン大会へのブース出店や、旅館やホテル向け説明会の開催に触れた上で「発信が足りないのは承知している。説明を続けて風評が起きないようにしたい」とした。