県内への移住が好調だ。2022(令和4)年度は1964世帯2832人で前年度より432世帯499人増え、県が調査を始めた2006(平成18)年度以降の最多を更新した。本県の優位性を生かして移住をさらに促進し、県土の新たな担い手確保につなげるよう求めたい。
県によると、2019年度は509世帯739人、2020年度は723世帯1116人が移り住んだ。2021年度は1532世帯2333人に倍増し、2022年度は動きがさらに強まった。2022年度の移住は首都圏の東京、埼玉、神奈川、千葉4都県からが計910世帯で、全体の46・3%を占める。全移住世帯主の年代は20代32・4%、30代20・6%、40代14・0%で、40代以下の若手、中堅、子育て世代が67・0%に達するのも特筆される。
県の人口は近年、万単位で減少し、現在177万人を割っている。急減を補うだけの移住を呼び込むのは容易ではないが、着実に増えているのは心強い。新型コロナウイルス感染拡大でテレワークなど働き方の幅が広がった。過密な大都市部から、ゆとりのある地方への志向が高まる。首都圏に近く、高速交通網も整う本県の強みがコロナ禍で増したと県はみている。一過性に終わらせず、好循環を持続させる手だてが欠かせない。
県は今年度、「ふくしまぐらし推進課」を新設して多様な支援策を講じ、移住コーディネーターによる相談にも注力する。福島労働局も重点事業に据え、東京、埼玉など国内6局のハローワークは福島就職支援コーナーを設けて後押ししている。移住の受け皿としての基盤を向上させる上で、相談担当者や移住希望者の受け止め方は参考になる。
浜通りは温暖な気候、復興へ歩む相双は挑戦できる環境、中通りは交通の利便性、会津は観光的な魅力に引かれて移住を検討する人が目立つ。一方で、首都圏では車や運転免許証を持たない若者が多く、何らかの支援も効果的といった提案もあった。
行政がどこまで手を差し伸べるかは別にして、移住をためらったり、障害になったりしている事情を把握する意味はある。労働局と県、市町村が連絡を密に率直な声を吸い上げ、きめ細かな支援に生かしてほしい。(五十嵐稔)