東日本大震災・原発事故

原発避難者特例法 特定住所移転者1万1000人 福島大・川崎教授 周辺13市町村調査 避難元と関係維持を希望

2023/07/06 09:15

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川崎興太教授
川崎興太教授

 福島大共生システム理工学類の川崎興太教授(52)は東京電力福島第1原発事故を受けた原発避難者特例法の運用実態や、同法が対象とする双葉郡など原発周辺の福島県内13市町村の認識を調査した。元々居住していた避難元自治体との関係維持を希望する「特定住所移転者」は4月1日時点で約1万1千人と、住所移転者の約7%に当たることが分かった。

 事故当時と4月の住民登録者、避難先での移住者、住所移転者、特定住所移転者の人数などを13市町村(双葉郡8町村といわき、南相馬、田村の3市、川俣町、飯舘村)に聞いた。状況は【表】の通り。市町村別の特定住所移転者の数が明らかになるのは初めてで登録者数は避難先の分散状況や避難元との距離、自治体の対応により差が見られたという。

 川崎教授は特例法が避難者の生活再建や自治体再生を図る上で重要な法律にもかかわらず、運用実態などが知られていないとの考えから研究に着手。4~5月に13市町村と県への特例法にアンケートや聞き取りを実施した。

 特例法が住民票のない避難先でも就学や医療・福祉などの行政サービスを受けられるようにした点については14自治体中、10自治体が「とても有効だと思う」か「少しは有効だと思う」と答えた。

 住民票を移した人を特定住所移転者と位置付け、避難元自治体との関係を維持する仕組みについては9自治体が有効である旨の回答を寄せた。有効と無効の評価にかかわらず特定住所移転者に広報誌送付などを続けている自治体が多く、一部は避難元に招くバスツアーや、社会福祉協議会の相談員による訪問活動などにも取り組んでいた。

 一方、特例法が特定住所移転者が避難元の行政に意見する場としている「住所移転者協議会」が置かれた市町村はなく、必要性を感じるとの回答もなかった。 調査は特例法に関する自治体の対応や制度への評価を記録し、今後の災害や原発事故が起きた際の対応に生かすのが目的。川崎教授は「避難元自治体と被災者の関係維持にかかわる特例法の役割は、被災者の声を聞かないと判断できない」との考えで、避難者の意識や生活実態などの調査を続けるとしている。