南相馬市小高区は、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の解除から12日で丸7年を迎えた。帰還する住民と移住者は年を追うごとに増えている。交流を通した新たなコミュニティーづくりが求められる。
原発事故発生前の2011(平成23)年2月の住民基本台帳に基づく小高区の人口は1万2834人だった。2016年7月に避難指示が解除され、翌年3月末の実人口は1488人で、1年後は1152人増の2640人となった。その後も順調に増え、今年3月末時点の実人口は3812人に上る。
市は2021(令和3)年度、小高区役所に移住相談に対応する部署を設けた。市の支援制度を活用して移り住んだ人は、避難指示解除直後は1桁台にとどまっていた。2019年度は12人、2021年度は27人、昨年度は32人で、徐々にではあるが着実に地域に根を張っている。市は市内全域への移住を推進するため、賃貸住宅や空き家の利活用に補助金を交付している。小高区での利用には加算金がある。こうした優遇措置を広く周知し、市外からの転入を後押ししてほしい。
移住者の定住に向けては、地元住民といかに交流を深めていくかも鍵となる。「移住者と触れ合う機会が少ない」といった住民の声も聞く。新型コロナウイルスの影響で交流イベントは減っていた。感染症法上の位置付けが5類に移行された今後、活発化させるべきだろう。
市は今年度、職員の案内で小高区内を街歩きする講座を開設した。移住者が始めた店などを巡るコースを想定している。住民が積極的に参加し、移住者との交流を深めるきっかけになるような工夫も加えてもらいたい。
小高区では、地元の高校生が地域の活性化に向けた調査やイベントの企画などを続けている。過去に参加した卒業生が地域への関心を高めて市内の企業に就職したり、市職員になったりした例もある。
避難指示を経て復興に向かう区内には農業、ものづくり、IT、宇宙開発などの分野などで意欲的に活動する帰還者、移住者や企業が少なくない。若い世代にこうした姿を伝え、将来のUターンにつなげる長期的な取り組みも欠かせない。(平田団)