
17度目の夏の甲子園で初めて4強まで進んだ昨夏から1年。先輩が届かなかった全国の頂点に挑む権利を得た聖光学院ナインだが、発足当初は部員がうまくまとまらない時期も過ごした。「日本一」の悲願成就のために結束を高めてきた。
福島大会決勝から2日がたった27日、選手は同校の練習場でノックなどに励んだ。「ナイスボール!」。グラウンドには甲子園に向け、士気を高める選手の声が響く。白球に食らいつく表情には緊張感が漂い、限られた時間で技術の向上を目指す気迫がにじんだ。
高め合う雰囲気がチームに浸透するには時間と試行錯誤を要した。「最初は練習で全力を出さない部員がいた。精神的に未熟だった」。福島大会で4番を務めた三好元気は現チームが始動したころを振り返る。
迎えた冬。意思統一を図るため三好ら3年生を中心に「上下一心(しょうかいっしん)」をスローガンに選んだ。学年に関係なく心を一つにするとの思いを込めた。部員間で話し合う機会を意識的に設け、練習や試合に向かう心構えなどを共有した。主力が率先してグラウンドで声を出し、控え選手も練習の補助役としてサポートした。
練り上げた団結力は、福島大会決勝の学法石川戦で結実した。代打や代走、継投、伝令などベンチの面々も含めた総力戦を展開。4点リードを許して延長十回と追い込まれても、一人一人が勝負を諦めず戦い、逆転サヨナラ勝ちを呼び込んだ。三好は「どんなに点を入れられても負けない、という気持ちをみんなが持っていた」と精神力の強さを勝因に挙げた。
27日の練習後に開かれたミーティングでは、主将の高中一樹が「日本一」の目標を改めて掲げた。「どの高校よりも熱量を持って一瞬一瞬を過ごそう」。おごりのない力強いまなざしで部員を引き締めた。チームの完成はまだ道半ば。頂点に向かい、最後の一戦まで成長し続ける。