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2025秋の高校野球 ニュース

聖光学院 技あり快勝発進 共栄学園(東東京)に9-3 夏の甲子園(8月6日)

2023/08/07 14:00

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【共栄学園-聖光学院】6回途中まで無失点と好投した聖光学院の先発小室
【共栄学園-聖光学院】6回途中まで無失点と好投した聖光学院の先発小室
【共栄学園-聖光学院】2回2/3を無失点と好救援を見せた聖光学院の3番手・高野
【共栄学園-聖光学院】2回2/3を無失点と好救援を見せた聖光学院の3番手・高野
【共栄学園-聖光学院】4回表、共栄学園1死二塁、二直から併殺を奪って窮地を脱し、遊撃手・高中(左)と二塁手・西本が笑顔を見せる
【共栄学園-聖光学院】4回表、共栄学園1死二塁、二直から併殺を奪って窮地を脱し、遊撃手・高中(左)と二塁手・西本が笑顔を見せる
【共栄学園-聖光学院】4回裏、聖光学院1死二、三塁、松尾が先制のスクイズを決める
【共栄学園-聖光学院】4回裏、聖光学院1死二、三塁、松尾が先制のスクイズを決める

▽1回戦 聖光学院9-3共栄学園(東東京)

 8月6日に行われた第105回全国高校野球選手権記念大会第1日の第2試合で、2年連続18度目の出場となった福島県代表の聖光学院は、初出場の共栄学園(東東京)を相手に投打がかみ合って快勝した。投手陣は左腕小室朱生から星名竜真、高野結羽の継投で共栄学園打線を3点に抑えた。打っては16安打に4犠打、9盗塁と大技小技を絡めた攻めで小刻みに加点した。


■小室流れ呼ぶ力投 6回途中で足つり降板 「次こそ体万全に」

 聖光学院の先発左腕小室朱生は5回1/3を被安打2、無失点の好投で勝利を引き寄せた。六回途中で左足がつり降板となったが、「次こそ体を万全にして、仲間を再び引っ張りたい」と力を込める。

 開始直後の一回、先頭打者に投じた1球目。内角の直球を右中間に運ばれた。「だったら打たせて取ってやる」。出はなをくじかれてもたじろがず、開き直って闘志を燃やした。無死二塁から2人を連続で空振り三振に切って取ると、4番打者を遊ゴロに仕留めた。

 立ち上がりの窮地をしのぐと、併殺など味方の好守にも助けられてギアを上げた。制球力と切れのあるスライダーを武器に、打たせて取る投球で1点も許さず、試合の流れを呼び込んだ。

 異変が生じたのは六回だ。左足のふくらはぎや筋がつり、大事を取って交代した。五回終了後の10分間の「クーリングタイム」で「もっとストレッチをすべきだった」と反省した。

 昨年までは重要な場面で萎縮するのが課題だった。精神力を養うために自分を追い込み、練習から全ての球を全力で投げるようにした。メンタルを鍛え、甲子園の初戦を預かるまでの存在に成長した。次の舞台に向けて「後ろの仲間を信じ、できることをやり切る」と静かに闘志を燃やした。


■3番手高野好救援 唯一の2年生 強気で2回2/3零封

 七回1死一、二塁から聖光学院の3番手として登板した高野結羽は2回2/3を無失点で抑えた。4点差に迫られた局面でマウンドに立つと、相手打者を併殺に仕留めて窮地を脱した。

 粘りが身上の共栄学園打線に八回は先頭打者からの連打、九回は2死からの連打で得点圏に走者を進められたが、勝負どころで強気の投球を貫いた。ベンチ入りメンバーで唯一の2年生右腕はバックの好守にも支えられ、勝利に貢献した。


■主将高中 聖地を魅了 遊撃で好守に2安打

 聖光学院の主将高中一樹は攻守両面でチームを鼓舞し続けた。遊撃の守備では打球への素早い反応と華麗なボールさばきを随所に披露し、目の肥えた聖地のファンから喝采を浴びた。

 福島大会決勝ではチームとして複数の失策を記録した反省があった。「今日は無失策で終えられた」と堅守の復活に胸を張った。

 快勝劇を守りで引き寄せた。四回1死二塁で二塁手西本颯汰がハーフライナーを好捕し、高中と連係して飛び出した二走をアウトにして併殺を完成させた。好守で勢いづいた直後にスクイズと犠飛で2点を先制した。

 六回は高中が魅せた。相手の先頭打者が二遊間に放った低い打球を回り込んで捕ると、華麗にターンして一塁手のミットに糸を引くような球を送った。打撃では相手に警戒されつつも五回に左中間適時二塁打を放つなど、2安打で存在感を発揮した。

 守備中は大声を張り上げ、終盤の窮地ではあえて笑顔を見せ、仲間を落ち着かせた。奮闘を物語る泥だらけのユニホームの主将は「守りがほころべば一気に崩れる。もう一度気を引き締め、次の試合に生かす」と2回戦に視線を向けた。


■6番松尾先制スクイズ 「何としても1点を取る」

 両チーム無得点で迎えた四回。均衡を破ったのは聖光学院の6番松尾学武だった。1死二、三塁の好機に三塁前に勢いを殺した打球を転がし、先制スクイズを成功。全力疾走で一塁に達し、内野安打とすると渾身(こんしん)のガッツポーズを決めた。待望の1点にベンチの斎藤智也監督も腕を上げ、拍手でたたえた。

 先制点が遠かった。松尾は「何としても1点を取る」と意気込んで打席に入った。三回まで共栄学園の好投手茂呂潤乃介を攻めあぐねた。松尾も第1打席で併殺に倒れていただけに思いはひとしおだった。

 事前の分析で、茂呂は得点圏に走者を抱えた場面では変化球が増える傾向をつかんでいた。初球が直球で少し動揺したというが、2球目をタイミングを合わせて捉えた。「平常心で臨めた」のを勝因に挙げた。

 ただ、この打席で一塁に向かう際に足に違和感を覚えた。五回終了後に疲れと暑さで足をつり、宮一柊之介と交代した。「日本一を取るまで、まだまだ満足していられない」。初戦突破に喜びつつもさらなる高みを目指し、表情を引き締めた。


■“正妻”杉山 足で得点機

 「やるべきことをやれた。聖地で粘り強い野球を見せられた」。3安打2打点と活躍した聖光学院の3番杉山由朗は初戦突破に胸を張った。

 四回は一塁線へのゴロを自慢の足で内野安打とし、先制点の足掛かりを築いた。強打者でありながら「とにかく、後ろにつなぐ意識で打席に立った」とチームバッティングに徹した。五回1死三塁から中前打、六回1死二、三塁から左前打で打点を記録。福島大会でチーム最多14打点を挙げた勝負強さを大舞台でも証明した。

 捕手としても投手陣を支えた。共栄学園打線を無失点で封じていた先発小室朱生が足をつり、六回途中で降板しても動じず、2番手星名竜真、3番手高野結羽の配球を組み立てて追い上げを断った。後輩の高野の粘投については「要所要所を締めた」とたたえた。

 2回戦は昨夏の準決勝で敗れた仙台育英との再戦となった。1年前のリベンジに向けて「相手はうちよりも打線は強力だ。残り1週間かけてしっかりと仕上げる」と気を引き締めた。


■片山2安打2打点 「一戦必勝で出し切った」

 聖光学院の7番片山孝は3打数2安打2打点と活躍した。「一戦必勝で全部出し切った。勝てて安心した」と噴き出る汗を拭った。五回2死二、三塁で内角の直球を中前適時打とし、一塁上で右拳を強く握り締めて雄たけびを上げた。大観衆の前でも気負わずプレーできたと平常心を強調。2回戦に向けて「もう一度気を引き締める」と前を見据えた。