東日本大震災・原発事故

政府、処理水24日にも放出 全漁連会長「反対変わらない」 22日閣僚会議で決定

2023/08/22 10:00

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 政府は21日、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について、24日にも開始する最終調整に入った。22日午前に関係閣僚会議を開催し決定する。政権幹部が明らかにした。岸田文雄首相は21日午後、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長と官邸で面会し、風評被害や漁業者支援などの対策実施に全責任を持つとして理解を要請。だが坂本氏は「反対は変わらない」と強調した。放出が「見切り発車」で始まる可能性が高まった。漁業者の批判が強まるのは避けられない。


 24日で調整する背景には、福島県沖での底引き網漁再開を9月に控え、放出開始から一定の期間を空けた方が望ましいとの判断があるとみられる。9月は首相の外遊日程が立て込むこともある。ただ中国の反発や風評被害など課題は多く、今後も曲折が予想される。

 面会で首相は「国として海洋放出を行う以上、廃炉と処理水の放出を安全に完遂する。漁業者が安心してなりわいを継続できる必要な対策を、今後数十年の長期にわたろうとも全責任を持って対応することを約束する」と述べ、海洋放出に理解を求めた。一方、坂本会長は「漁業者、国民の理解を得られない処理水の海洋放出に反対であることは、いささかも変わらない」と従来の立場を強調した。

 坂本会長は国際原子力機関(IAEA)の包括報告書などに触れ「科学的な安全性への理解は深まってきた」としながらも、科学的な安全と社会的な安心は異なるとし、「社会的な安心を確保し、全国の漁業者や後継者が子々孫々まで安心して漁業できるよう国の全責任で必要な対策を講じ続けてほしい」と訴えた。

 今後の漁業者へのフォローアップ体制の構築、漁業者支援や風評対策などへの予算措置の機動的な積み増しと見直しも求めた。首相は「(要望を)重く受け止める。フォローアップ体制をつくっていきたい。処理水の影響にかかる必要な予算措置については、水産予算とは別に政府全体として責任を持って対応する」と応じた。

 政府と東電は2015(平成27)年、県漁連に「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分も行わない」と約束した。政府、東電はこの約束を順守すると繰り返してきたが、県漁連は放出への反対姿勢を崩していない。坂本会長は首相との面会終了後、この約束についての受け止めを記者団に問われ、「約束は破られていないが、果たされてもいない」と答えた。

 海洋放出を巡っては、新たな風評被害の発生を懸念する声が県内外で根強い。各種世論調査でも政府の説明が不十分とする意見が大半を占めている。