水産庁は26日、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出初日の24日に周辺海域で網を設置し採取した魚について、放射性物質トリチウムの濃度は検出限界値未満で「不検出」だったと発表した。迅速分析と呼ばれる新手法で調査し、今後1カ月程度は毎日、結果を公表する。
福島県沖では9月1日に底引き網漁が始まる。中国が日本の水産物輸入を全面停止し、漁業者への影響も懸念される。検査結果を開示し、風評被害の拡大防止につなげる狙いがある。
8月26日に公表した二つの検体は、処理水の放出口から5キロ圏内の福島県沖で25日に網を引き上げて取れたヒラメとホウボウで、ともに不検出となった。水産庁委託の海洋生物環境研究所(東京都)が宮城県多賀城市に設けた拠点で分析した。
分析結果は海外を意識し、水産庁のホームページで日本語と英語で掲載する。放出前後でデータを比較するため、9日から掲載を始めた。放出前に採取したヒラメ、ホウボウ、マダイ、マゴチの4魚種、計14検体は25日までの公表でいずれも不検出だった。
今後、1日当たり最大2検体を調べ、今年度中に約180検体を目指す。26日も福島県沖で同日朝に取れたヒラメとホウボウの身を装置に入れて検査した。
水産庁は昨年始めた「精密分析」と呼ばれる手法でも検査を実施し、北海道から千葉県沖の水産物を詳細に調べている。分析には1カ月半程度かかるため、迅速分析も導入した。
トリチウムについては環境省も27日に海水の測定結果を発表する。県も監視を強化しており、福島第1原発の沖合5キロ圏内の計9地点で、精密分析(検出限界値1リットル当たり0・1ベクレル程度)、迅速分析(同10ベクレル程度)をそれぞれ月1回実施している。精密分析は1カ月半程度、迅速分析は3~4日程度で測定結果を公表する。