東京電力福島第1原発事故の影響で休止している県立大野病院(福島県大熊町)の後継病院について、福島県は現在地で建て替え、早ければ2029年度の開院を目指す。2025年度末までに既存施設を解体し、2026年度にも建築工事を始める方針。30日、福島市で開いた検討会議で基本構想の素案を示した。
県は大熊町から現在地周辺、旧大熊町役場周辺の2候補地の提案を受け、後継病院の整備地を検討してきた。交通アクセスの利便性、現在の150床から250床前後への増床を見据えた用地確保の実現可能性などを考慮した。
県によると、現在の病院は免震構造でない上に老朽化が進み、屋内外の壁などが損傷している。大規模改修には新築と同程度以上の費用がかかることから建て替える方針を決めた。
素案によると、後継病院には双葉郡8町村の医療機関にない人工透析(腎臓内科)や産婦人科などを含む全20科を設ける。開院時の入院病床数は100床前後とし、人口動向などを踏まえて段階的に250床前後まで増やす。双葉地域の中核的病院をイメージできる病院名に変更する。県は10月に開催予定の次回会議で基本構想をまとめる。
大熊町の吉田淳町長は30日の会議で「帰還のために病院が必須と考えている避難者が多い。1日でも早く開院できるように対応してほしい」と要望した。議長の佐藤宏隆副知事は「今後さらに検討を進め、できる限り早期に開院できるように取り組む」と応じた。