論説

【ツール・ド・ふくしま】復興と感謝を伝えたい(9月9日)

2023/09/09 08:48

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 東京電力福島第1原発事故に伴い避難区域が設定された12市町村と、東日本大震災の津波被害を受けたいわき、相馬、新地3市町の被災15市町村できょう9日から2日間、福島復興サイクルロードレース「ツール・ド・ふくしま2023」が初めて開催される。台風通過後の安全対策に万全を期すとともに、全国から集う選手らに復興の歩みと被災地支援への感謝を伝える大会になるよう願う。

 9日は川俣町―飯舘村間の12キロ時間競走と、Jヴィレッジ(楢葉・広野町)を発着点とするサイクリングが行われる。10日は国内最長の211キロで計5レースが組まれている。新地町から太平洋沿いをいわき市へ南下し、ふくしま復興再生道路として阿武隈山系に整備された国道399号を通って葛尾村まで北上する。2日間で北海道から沖縄県まで34都道府県の計約700人が被災地を巡る。

 15市町村には応援スポットが設けられる。川俣町がフォルクローレの演舞、広野町が太鼓演奏を披露するほか、「頑張れ」「復興の浜風になれ」などと記された横断幕や、マスコットキャラクターなど各市町村が趣向を凝らして選手を後押しする。多くの住民が沿道に足を運び、声援を送ってほしい。

 選手は応援を受けながら真新しい沿岸部の防災緑地などを走り、復興へ進む被災地の脈動を感じてくれるといい。レースや応援の模様は映画監督が動画にまとめ、広く発信される。かつては立ち入れなかった地域を選手が走り抜ける姿は、被災地の現状のみならず活力あふれる姿を全国に届けてくれるに違いない。

 廃炉作業など復興は道半ばだ。時間が許せば双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館なども訪れ、今なお残る帰還困難区域や、避難指示が解除されても住民帰還が進まない現実に理解を深めてもらえれば、ツール・ド・ふくしまの意義も増す。

 大会を記念して16日、いわき市沿岸部の「いわき七浜海道」でサイクリング大会も催される。浜通りでは国のナショナルサイクルルート指定を目指す官民連携組織が発足した。大会を契機に被災15市町村が連携を強め、交流人口拡大と復興発信に向けて早期に指定されるよう努めてもらいたい。(円谷真路)