
福島県浪江町出身の栃本あゆみさん(35)は、昨年秋まで町内の仮設商店街で運営していたおむすび専門店「えん」を、8月に町内権現堂に移転オープンした。「地域に愛される店を長く続けたい」と、食で町に幸せを届ける思いだ。
店内は白い壁に木のカウンターという明るく温かみのある内装。おにぎりは定番の梅干しやツナマヨネーズの他、町の特産品を使った「にんにく味噌」「じゃこ山椒七味」を会津坂下町産の特Aコシヒカリで包む。
新店舗になって常連以外にも多くの来店があり、客が3倍近くに増えた。ランチに加え夜の営業も始めると、毎日のように顔を出してくれる人もいる。あっという間に棚が酒のキープボトルでいっぱいになった。
客から「幸せを感じた。ありがとう」という言葉をもらった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生後に東京都から帰郷し、復興を目指して始めた店だけに、栃本さんは「やって良かった。被災した人からの『幸せ』の言葉は重みがある」と感謝する。
10月にはJR浪江駅東側のコワーキングスペース「ナミエシンカ」でカフェ経営にも挑戦する。「食品ロスやプラスチックごみ削減など、環境問題にも配慮した店にしたい」。古里を元気にする挑戦は続く。