【復興臨時支局・浪江町編】知見・技術生かし新産業 町が企業や大学と連携 拠点整備へ

2023/09/27 09:44

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 福島県浪江町は、町と個別に協定を結んでいる企業や大学を引き合わせ、それぞれの知見や技術を生かして新たな産業の創出につなげる。産業化を実現する拠点として「産学官連携施設」を整備する方向で検討に入った。町内に立地する福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)による研究や、新エネルギー分野をはじめとした最先端の技術開発との協働も見据え、産学官の交流を活発にする環境を整える。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に向け、町は全国40以上の企業や大学などと協定を結び、連携・協力を進めている。協定に基づく取り組みは、町内の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)を活用した水素などの新エネルギー、防災、放射線科学、教育など、さまざまな分野にわたる。ただ、協定の枠を超えて相互に連携し、産業化や事業化を実現する場がなく、企業や大学側から「浪江に集まった英知を結び付ける必要がある」との声が上がっていた。

 町内には今後、エフレイの本施設ができ、研究が本格化する。産学官連携施設を核に、企業や大学間の連携が芽生え発展すれば、復興の一層の加速や地域課題の克服につながると町は期待する。

 町は施設設置に向け、調査費用として今年度の一般会計予算に約3600万円を計上した。現段階で、施設の機能として企業や大学向けの貸事務所、共有オフィスなどを想定しており、今年度中に施設の規模や設置場所などを検討するとともに、需要などを調べる。年度内に調査を終え、2024(令和6)年度以降に建設に向けた本格的な議論に入る見通しだ。

 町によると、産学官が連携を深める施設は県内では珍しいという。町産業振興課は「個別の取り組みに横のつながりをつくり出し、新規の産業や事業を具現化したい。企業や大学から施設の必要性を聞き取り、検討を進めていく」としている。