
福島県長距離界のホープが高校1年歴代2位の好記録で国体タイトルを得た。鹿児島市の白波スタジアムで17日に行われた「燃ゆる感動かごしま国体」陸上競技の少年男子B3000メートルで、増子陽太(学法石川高1年)は8分5秒32で好敵手に競り勝った。全国高校総体(インターハイ)の反省を糧に、駅伝強豪校で培ったスピードやレース運びを発揮。高校の全国舞台で初めて得た栄冠をステップに5000メートルや駅伝のトップランナーを目指す。
最後の力を振り絞り、腕を振った。ラスト約50メートルでライバルの新妻遼己(兵庫・西脇工高1年)を抜き去り、フィニッシュラインを一番に駆け抜けた。競技場の歓声を全身に浴び、拳を握り締めて雄たけびを上げた。大会最終日に陸上競技での県勢唯一の優勝を果たし、「福島県チームに8点をもたらすことができた」と達成感に浸った。
序盤は中学時代からしのぎを削る新妻の後方に付いた。1000メートル過ぎで前に出たが、引き離せず終盤に突入。残り150メートル付近で新妻に抜き返され、最終直線に差しかかった。先頭で引っ張ってきた体力は限界に近かったが、友人や指導者、県代表の仲間が脳裏に浮かんだ。「絶対に恩返しする」。スパートをかけて再逆転し、大接戦を制した。
鏡石中3年だった昨年8月、福島市で開かれた全国中学校体育大会(全中)の男子3000メートルを8分18秒49の大会新記録で制した。2カ月後のとちぎ国体少年男子B3000メートルで自身の日本中学記録を塗り替える8分11秒12で3位に入賞。鳴り物入りで学法石川高に入学した。ただ、8月のインターハイ5000メートルでは前に出る意識が強く、息切れして予選で敗れた。
重ねた実績の一方で同世代に追われる重圧を抱えていた。「不安なんです」。16日夜に学法石川高OBで「ⅢF(スリーエフ)」代表の田母神一喜さん(25)=郡山市出身=にLINE(ライン)で打ち明けた。日本選手権の800メートルを制した先輩に「期待しているぞ」と背中を押され、迷いを振り払ってスタートラインに立った。
ハイレベルな環境に身を置いて半年。インターハイの涙を経て筋力が増し、力強く走れるようになった。レース中の速度を保つスピード練習も奏功し、最終盤の競り合いで勝ち切った。
国体の舞台で刻んだ好記録は、さらなる飛躍への自信となる。「5000メートルで13分50秒を切る。3000メートルを8分5秒台で走れたので、いけると思う」と頼もしかった。
■「結果を自信に」 学法石川高・松田監督
学法石川高の松田和宏監督(49)はインターネットのライブ配信で増子の快走を見届けた。「苦手意識のあったスピードがついてきた。今回の結果を自信にしてほしい」とねぎらった。
高校の練習環境に早く適応し、目立ったけがもなく順調に練習を重ねてきたという。
国体のレース運びは本人に任せていたが、強風の中で周囲を引っ張る姿に「他の選手の表情や走りを見極めて勝負どころを探っていた。さらにスピードを磨いてほしい」と期待した。