

秋田市で22日に行われた第76回秋季東北地区高校野球大会準決勝。福島県第3代表の学法石川は八戸学院光星(青森第2代表)と接戦を演じ、33年ぶりとなる来春の選抜大会(センバツ)出場に可能性を残した。1、2年生ナインは夏にあと一歩で甲子園を逃した先輩の思いを背負い、第1代表2校を含む他県の強豪を連破した。4試合で深めた自信と見えた課題を持ち帰り、年明けに吉報が届くと信じて鍛錬を続ける。
センバツを手繰り寄せる決勝進出を懸けた大一番は緊迫した「守り合い」となった。無四球無失策の堅守をけん引したのは、石川義塾中時代から盟友の1年生バッテリーだ。公式戦初先発の佐藤翼は、切れのある変化球で内角を強気に攻めた。ミットを構える大栄利哉のリードに支えられ、持ち前の制球力を発揮。強打者ぞろいの光星打線に凡打の山を築かせた。
背番号10の佐藤翼と、捕手ながら2回戦と準々決勝を投げた大栄はライバルでもある。ブルペンで「2人で最高のピッチングをしよう」と誓い合い、真っ向勝負を挑んだ。
一方、学法石川打線も夏の甲子園8強の立役者となった光星の好左腕洗平比呂(2年)を打ちあぐねた。双方のスコアボードに六回まで0が並んだ。一球の重みを知ったのは七回。1死からの連打で一、三塁の窮地を迎えた。大栄は高めのボール球を求めたが、佐藤翼の直球はわずかに甘く入り、決勝の中犠飛を許した。
今大会は勝負強い打撃を見せ、2回戦で聖和学園(宮城)、準々決勝で金足農(秋田)と各県第1代表に競り勝った。ただ、洗平の140キロ台中盤の速球に対応できず、安打は4番大栄が二回に放った右越え三塁打のみ。三振は10を数えた。
大栄は「全国レベルの投手からも、勝利を決める一本を打たないといけない」と打力を高める必要性を口にした。佐藤翼は「強豪に一人で投げ切った経験は自信になる。切れのある投球ができるように腕を磨く」と成長を誓った。
「本気になれば世界が変わる」。応援席には佐々木順一朗監督の言葉を記した横断幕が掲げられた。甲子園から遠ざかる中、今夏は福島大会の決勝に進出。延長でリードを奪いながらも聖光学院に逆転負けを喫した。道のりの厳しさを痛感した現チームは新たな世界を見ようと、努力を重ねる。今大会の堂々とした戦いぶりは高校球界に「古豪復活」を印象づけるに十分だ。ベテラン指揮官は「(センバツに)選ばれるという思いで冬場の練習に取り組む」と意気込んだ。
■メガホン手に応援 部員、保護者ら
学法石川の三塁側応援スタンドでは控え部員や保護者、森涼校長らがメガホンを手に声をからし、選手を後押しした。
先発した佐藤翼(1年)の父忠義さん(47)は、捕手大栄利哉(同)と共に強力打線を1点に抑える息子を祈るような気持ちで見守った。「強気の投球が光った。冷静さも兼ね備えた大黒柱になってほしい」とスケールアップを期待した。
卒業生や石川町のファンも大一番に注目した。野球部OBで町内で菓子店を営む三瓶善孝さん(59)は1981(昭和56)年の秋季東北大会に二塁手で出場。準決勝で東北(宮城)に3―4で敗れ、選抜出場を逃した。「選抜に出られるのか、やきもきする気持ちは分かる。4強という結果を自信に、さらに成長してほしい」とエールを送った。
■センバツ選考 戦績考慮に期待
秋季大会の成績は、センバツの重要な選考材料となる。学法石川は宮城、秋田両県の第1代表を破り1回戦の盛岡中央と合わせて3勝を挙げ、1996(平成8)年以来27年ぶりに4強入りした。福島県高野連の木村保理事長は東北の代表選考について、学法石川に関して「他県の強豪を倒した戦績などは選考で考慮されるのではないか」と期待感を示す。大栄と佐藤翼が接戦で好投した点も「投手陣の厚みも証明された」と評価した。