
福島県大熊町の教育施設「学び舎(や) ゆめの森」の子どもたちは28日、施設内で地域の明るい未来を発信する演劇を上演した。東京電力福島第1原発事故による避難などで町内で生活した経験がほとんどない中、大熊の歴史や自然を取り入れた劇で郷土愛を表現した。
ゆめの森は今春、避難先の会津若松市から町内に移った。子どもたちが地域に対する学びや愛着を深めてもらおうと、4月から演劇ワークショップを実施した。群馬県出身で演劇の演出に関わる木村準さんの指導を受け、多くの町民と交流しながら脚本を考え、演劇の基本を学んだ。
「きおくの森」と題し、子どもたちや教職員約30人が出演した。心に傷を持った男性と、移住して地域になじめない少年が、不思議な少女「青の少女」をはじめ、人との出会いから生きる力を取り戻す物語を繰り広げた。方言を交え、大熊の地で得た感情を全身で表現した。最後に出演者が集い、「僕たちの思い出が古里をつくるんだ」と力強く声を合わせた。
移住の少年を演じた5年生の宗像咲久斗(さくと)さん(10)は「物語に魅力を感じた。最後までやり遂げて楽しかった」と笑顔で述べた。