「読書週間」にちなんだ読書推進活動が最終日の9日まで、県内各地で展開されている。活字離れが指摘される中、県内では公立図書館や書店のない自治体が少なくない。読書環境の充実策の一つとして、本をみんなで持ち寄る「まちライブラリー」を広めてはどうか。
まちライブラリーは人が集まりやすい場所などに設け、寄贈する本を互いに持ち寄り、貸し出す。寄贈者は本の魅力やメッセージを記し、読んだ側は感想を書き込む仕組みだ。オフィスや大学、病院、ショッピングセンター、個人宅など全国に現在、1089カ所設けられている。
県内には福島、会津若松、いわき、相馬、矢吹、西会津各市町に計8カ所ある。福島市の「まちなか交流施設ふくふる」では、本の感想を見て借りる人もいるなど、読書の輪を広げ、コミュニケーションを深める場になっている。
21歳の若者の6割は1カ月に1冊も本を読まない傾向が文部科学省の調査で浮かび上がった。小学生だった当時より読書量は大きく落ち込んでいた。交流サイト(SNS)や動画投稿サイトの普及が一因とみられている。県の調査でも、1カ月に1冊も読まない小学生の割合は2%に満たないのに比べ、高校生は40%を超える。
県立図書館要覧によると、公立図書館がないのは県内25町村に上る。全59市町村に対する設置率は57・6%で、全国平均の77・4%と大きな差がある。出版文化産業振興財団の調べでは、書店は県内28自治体に一つもなく、無書店率47・5%は全国平均の26・2%を大幅に上回る。
読書週間は、読書の力によって平和で文化的な国づくりを進める目的で1947(昭和22)年に始まった。石川町立図書館では「本の処方箋」と銘打ち、「疲れている」などの症状に合わせて司書がお薦め本を提案するなど、各地で工夫を凝らした啓発活動が繰り広げられている。
期間限定とせず、継続的な取り組みが大切だろう。住民やボランティアの力を寄せ合えば、図書館や書店の役割を補えるはずだ。まちライブラリーをはじめ、本に身近に親しめる機会を市町村や地域単位で増やし、知識や視野、豊かな情操も育む読書に光を当てていきたい。(三神尚子)