



福島民報社は県議選の無投票当選者17人を含め、立候補者71人全員を対象にアンケートを実施した。政府と東京電力は8月に福島第1原発の処理水の海洋放出を開始し、県議選が告示された2日には3回目の放出を始めた。海洋放出に対する賛否を尋ねたところ、「どちらとも言えない」が41人で最多となった。「賛成」は20人、「反対」は10人だった。6割近くが賛否を明確にしなかった。
アンケート結果のURLは https://www.minpo.jp/pub/rikkouhou_enquete2023 。
回答を寄せた立候補者71人の党派別内訳は自民31人、立憲民主13人、共産6人、公明4人、維新1人、諸派1人、無所属15人。
海洋放出に関する賛否を尋ねた回答結果は【グラフ(1)】の通り。「どちらとも言えない」と回答したのは自民22人、立民9人、公明2人、無所属8人だった。理由として60代男性候補は「国際原子力機関(IAEA)の包括報告書にある科学的根拠に基づく計画だが、風評への懸念があり、国内外への正確な情報発信と万全な風評対策を徹底しなければならない」と回答。40代男性候補は「モニタリングの結果や風評被害の有無、国際社会の理解促進などの推移を見守る必要がある」と強調した。
「賛成」と答えたのは自民9人、立民2人、公明2人、維新1人、諸派1人、無所属5人だった。50代男性候補は「廃炉と復興加速化のため」を理由とした。
「反対」は立民2人、共産6人、無所属2人。理由として70代女性候補は「通常の原発とは異なり、事故を起こした原子炉から発生した水だから」と答えた。
■県漁連との約束守られたか 「どちらとも言えない」7割
政府と東電が2015(平成27)年に県漁連と交わした「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分も行わない」との約束が守られたかどうかの質問には「どちらとも言えない」が49人で7割を占めた。「破られた」が19人、「守られた」が3人だった。
回答結果は【グラフ(2)】の通り。「どちらとも言えない」と回答したのは自民27人、立憲民主7人、公明4人、無所属11人。理由として60代男性候補は「ある程度、県漁連の理解を得ていると思うが、今後も地元の漁業が継続発展していけるか政府と東電の責任が問われている」と注視する姿勢を強調した。
「破られた」と答えたのは自民1人、立民6人、共産6人、維新1人、諸派1人、無所属4人。50代男性候補は「解釈の違いはあるが、もう少し時間をかけて丁寧に話し合うべきだった」と理解醸成の不十分さを理由に挙げた。
「守られた」としたのは自民3人だった。40代男性候補は「一定の理解が得られたものと考える」と答えた。
県漁連の野崎哲会長は政府と東電との約束について、「現時点で破られたと考えない」とした上で「放出と廃炉が完遂した時点で、福島県漁業が存続していることが確認されて初めて理解することができる」との姿勢を示している。
■処理水放出で新たな風評被害 「起きている」3割
県議選の立候補者71人に福島民報社が実施したアンケートで、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出による新たな風評被害の有無、国内外への説明など政府の対応への評価を聞いた。新たな風評被害が「起きている」と答えたのは3割に当たる22人で、「起きていない」は13人、「どちらとも言えない」は36人だった。
回答を寄せた立候補者71人の党派別内訳は自民31人、立憲民主13人、共産6人、公明4人、維新1人、諸派1人、無所属15人。
風評被害に関する回答は【グラフ(3)】の通り。「起きている」と答えたのは自民1人、立民8人、共産6人、公明1人、無所属6人だった。40代男性候補は「海外の一部で(日本産海産物の)輸入を停止している事実がある」と理由を答えた。30代男性候補は「福島の海産物を積極的には買わないと思うと言われた」とした。
「起きていない」と回答したのは自民6人、立民3人、公明1人、諸派1人、無所属2人。30代男性候補は理由を「消費者が冷静な判断をしているため、風評による魚価の下落などは起きていない」とした。
「どちらとも言えない」は自民24人、立民2人、公明2人、維新1人、無所属7人。科学的根拠に基づく安全性への理解が広がる一方で、海外の反発があることを踏まえた理由が多かった。
■政府の国内外への説明 4割超が「不十分」
海洋放出に関する政府の国内外への説明は十分かとの質問には4割超の33人が「不十分」と答えた。「十分」は3人、「どちらとも言えない」は35人だった。
回答は【グラフ(4)】の通り。「不十分」としたのは自民2人、立民11人、共産6人、公明4人、維新1人、無所属9人。60代男性候補は「国内外の消費者の理解がさらに進むように取り組むべきだ」と求めた。60代女性候補は「根本的な解決策が十分に示されていない」と強調した。
「十分」と答えたのは自民2人、諸派1人。40代男性候補は「国際原子力機関(IAEA)との連携もあり、国際理解は進んでいる」と答えた。
「どちらとも言えない」は自民27人、立民2人、無所属6人。政府に漁業関係者や海外政府などへの説明の継続を求める答えが多かった。
■政府の風評対応など 「評価する」6割超
政府の風評対応や賠償などの対策を評価するかとの質問には6割超の44人が「評価する」と答えた。「評価しない」が16人、「どちらとも言えない」が11人となった。
回答は【グラフ(5)】の通り。「評価する」としたのは自民31人、立民2人、公明4人、無所属7人。「評価しない」と答えたのは立民6人、共産6人、維新1人、諸派1人、無所属2人。「どちらとも言えない」は立民5人、無所属6人だった。
政府は海洋放出後、水産事業者支援策として新たに予備費207億円を投じ、既存の基金800億円と合わせて1007億円の対策費を計上した。風評対策や漁業継続支援に充てている。
【調査方法】告示前に立候補予定者全員に調査票を配り、選択式と記述式で質問した。立候補した71人全員から回答を得た。